アメリカの証券会社に口座を持っていた方が亡くなり、相続手続きのために証券会社に連絡したところ、「Form 706-NAを提出してください」と言われた。フォーム 706とは何なのか、日本からどうやって対応すれば良いのか。この記事で解説します。
なお国際相続の場面で良く依頼を受ける資料ですが、詳細をまとめたWebサイトがありませんでした。そこで、我々の経験とそれにAIを使って調べた内容になります。詳細は、アメリカの会計事務所などの専門家にお問い合わせください。
【Form 706-NAとは何か】
Form 706-NAは、アメリカの連邦遺産税(Estate Tax)の申告書です。正式名称は「United States Estate (and Generation-Skipping Transfer) Tax Return」といいます。
ただし、証券会社がForm 706の提出を求める理由は、遺産税の申告を求めているのではなく、「遺産税の申告義務がないことを確認するため」または「相続手続きを進めるための内部手続き上の要件」として求めているケースが多くあります。
ちなみにForm706-NAのNAはNonresident Alien(非居住外国人)の略だそうです。アメリカから見れば日本居住者は非居住外国人ですね。
【被相続人の区分によって大きく異なる】
Form 706には2種類あります。
① Form 706(通常版)
アメリカ市民・永住権保持者(グリーンカード保持者)が対象です。2024年時点で遺産総額が約1,361万ドル(1ドル160円とした場合約20億円)を超える場合に申告義務があります。
② Form 706-NA(非居住外国人版)
アメリカ市民でも永住権保持者でもない非居住外国人(Non-Resident Alien)が対象です。アメリカ国内財産が6万ドル(1ドル160円とした場合約960万円)を超える場合に申告義務が生じます。この基礎控除額の低さが、日本人には大きな落とし穴になります。
日本に住んでいた日本人がアメリカの証券口座を持っていた場合、Form 706-NAが該当します。
【証券会社が求める書類の実態】
大手アメリカ証券会社(Fidelity・Schwabなど)は、口座の払い出しに際して以下のいずれかを求めることが多いです。
- Form 706-NAの申告書(または申告不要の証明)
- IRS(アメリカ内国歳入庁)からの Transfer Certificate(移転証明書)
- 遺産税が不要であることを示す宣誓書(Affidavit)
特にTransfer Certificateは、IRSに申請して取得する書類で、取得まで数か月かかることがあります。証券会社によって要求書類が異なるため、まず証券会社の相続担当部署(Estate Services)に正確に何が必要かを確認することが第一歩です。
【具体的な対応の流れ】
Step 1:証券会社に連絡する
電話またはメールで、具体的に何の書類が必要かを確認します。英語でのやり取りが必要になります。
Step 2:アメリカ国内財産の総額を確認する
証券口座の残高が6万ドルを超えるかどうかで、Form 706-NAの申告義務が決まります。他にもアメリカ国内財産(不動産・銀行口座など)があれば合算します。
Step 3:Form 706-NAの申告またはTransfer Certificateの取得
6万ドルを超える場合は、死亡日から9か月以内にForm 706-NAをIRSに申告する必要があります。申告書の作成にはアメリカの税務の知識が必要なため、アメリカのCPA(公認会計士)または国際税務に詳しい税理士への依頼をおすすめします。
Step 4:書類を証券会社に提出し、口座の払い出しを受ける
必要書類が揃ったら証券会社に提出し、残高の払い出しまたは口座移管の手続きを進めます。
【日本の相続税との二重課税に注意】
アメリカの遺産税を支払った場合、日本の相続税との二重課税が生じる可能性があります。ただし、日米間には租税条約があり、外国税額控除によって二重課税を一定程度緩和することができます。日米両方の申告を視野に入れて、全体的な税負担を試算することが重要です。
【まとめ】
| 確認事項 | 内容 |
| 被相続人の区分 | 市民・永住権・非居住外国人のどれか |
| アメリカ国内財産の総額 | 6万ドル超かどうか |
| 証券会社の要求書類 | Form 706-NA か Transfer Certificate か |
| 申告期限 | 死亡日から9か月以内 |
| 日本の相続税 | 外国税額控除の適用検討 |
Form 706-NAは日本ではなじみの薄い書類ですが、アメリカに資産を持つ日本人の相続では避けて通れないテーマです。対応を誤ると口座が凍結されたまま何年も経過してしまうケースもあります。早めに国際相続に詳しい専門家にご相談ください。
プロビタス税理士法人は日本の会計事務所なので、我々がForm 706を作成することはできませんが、必要であればご紹介することはできます。
ご不明な点がございましたら、何なりとお申し付けください。
併せてこちらもご参照ください


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