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国際相続の実例の紹介(”住所”とは?)

国際相続にあたって住所の判定はとても大事ですが、とても難しいです。簡単な事例をご紹介いたします。
目次

事例紹介

以下のようなケースがありました。

日本国籍の方の話です。

日本を30年前に離れて、アメリカで定住していました。アメリカで仕事をし、アメリカ人と結婚し、アメリカで子供を育てて、住居を購入していました。

でもとある日、体調を崩して、日本に帰国し、病院に行ったところ、がんが見つかりました。病状が悪化し、半年ほど日本で治療しました。ただ死期を悟り、アメリカに戻りました。そして家族で看取られました。

アメリカで生活していた人が、アメリカで死亡し、子供に財産を残した。

相続が発生しますが、日本の相続税は何も関係なさそうです。

でも一つ問題がありました。日本に銀行口座と不動産がありました。この方のご兄弟と一緒に共有している不動産でした。日本滞在中はその不動産で生活していました。

その不動産が住所に該当するのか?

とても重い問題です。もし住所に該当するのであれば、日本の相続税法上は、無制限納税義務者に該当します。無制限納税義務者に該当した場合には、日本のみならず、アメリカの遺産も日本の相続税の対象になるのです。(どのように対応したかは、お問い合わせいただければ説明いたします)

住所とは?

日本の相続税法上の住所の定義はどうなっていますでしょうか?

相続税では、住所に関する推定規定さえありません(所得税はあります)。「生活の本拠」を客観的事実のみで判定します(相続税基本通達1の3・1の4共-5)。

あくまでその人の職業や資産の所在、家族の居住状況、国籍などの客観的な事実をもとに総合的に判断します。よく聞かれますが、住民票の有無だけで判断するものではないし、滞在期間183日だけで判断するわけではありません。

極めてあいまいなのです。実際の案件をヒアリングして、住所に該当するか否かを検討していく必要があります。裁判例も多くありません。有名な武富士事件くらいでしょうか?武富士事件は平成23年でしたが、それ以降、新しい情報が出てきていることはありません。

住所の判定はとても大事なのですが、税務実務は極めて不透明です。

ご参考までに

日本人の留学生や短期間の国外勤務者は、日本に住所があるものとして取り扱います。

二重国籍の場合、日本国籍と外国国籍と併有する重国籍者も日本国性があるものと取り扱われます。

最後に

特に相続税のない国(中国・香港・シンガポールなど)から日本に移住されてきた方に、この説明をすると大変驚かれます。両親は日本に来たことないのに、自分が日本に住所があったために、本国の遺産にも日本の相続税がかかるというのは、きわめて特殊です。

プロビタス税理士法人では、国際税務を専門にサービス提供しています。

もし不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。