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中山美穂さんの逝去を国際相続の点から考える

目次

2024年12月6日 中山美穂さんが不慮の事故でこの世を去りました。享年54歳。私はまさに世代真っ只中。私の青春でした。

あまりに悲しすぎるニュースで、数日たった今でも現実を受け入れることができません。

少し昔になりますが、2016年に下北沢本多劇場で行われた演劇で中山美穂さんが主演するということで、観劇に行きました。生ミポリンに感動したのを覚えています。

先日、仕事でパリに行く機会がありましたが、日本人女性とすれ違うたびに「中山美穂かなぁ」と思っていました。

あまりに残念なニュースですが、国際相続を扱っている税理士として、今回の例を題材に、国際相続について紹介したいと思います。

(なおこの記事はアフィリエイトでもなんでもありません。今回の件で収益を得ようなんてことは考えていません。)

法定相続人

報道によると辻仁成さんと2002年に結婚し、2004年に出産し、2014年に離婚したそうです。その後に日本に帰国し、そして今回の不幸がありました。そして、中山美穂さんには妹がいらっしゃって、妹も芸能人として活動されているのは知られています。

この場合の法定相続はどうなるのでしょうか?

  1. 離婚した夫は法定相続人ではありません。

2. 子供はいらっしゃるので、子供は法定相続人になります。

3. この場合、妹は法定相続人にはなれません。

したがって、遺言などがなければ、お子様が100%法定相続することになります。

(遺言などがあれば、この限りではありませんが、事情を考えると、きっと遺言はないと思います、私の想像ですが)

国際相続

報道によると、結婚したのちに、パリに移住し、パリで出産されて、そのまま子育てをされていたということです。お子様は今でもフランスに残って、フランスで生活されていると聞きます。

このような場合に、法定相続人であるお子様は日本での相続税申告義務はあるのでしょうか?

結論としては、あります。(恐らくですが、残念ながら)

国際相続の考え方

相続税の申告義務の判定にあたって、まず考慮すべきは基礎控除です。相続する遺産の総額が基礎控除以下であれば、相続税の申告義務はありません。

相続税の基礎控除は以下のように計算します。

3000万円+600万×法定相続人の数

今回は法定相続人の数が1人ですので、基礎控除は3600万です。おそらく、中山美穂さんは基礎控除以上の遺産はあるんじゃないか?と想像します。

もし遺産の総額が基礎控除を超えていたとして、お子様は相続税を申告しなければならないのでしょうか?

相続税の納税義務者

お子様はフランスに在住している非居住者で、もしかしたら日本国籍すら保有してないかもしれません。そんな人が、日本で相続税の申告をしないといけないのでしょうか?

結論はYesです。

大きな考え方として、外国人から外国人への相続については、日本の相続税はかかりません。ただそれ以外は、日本の相続税はかかります。

相続税の用語で説明すると、お子様は非居住無制限納税義務者に該当します。詳しくは以下をご参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138_qa.htm

引用

非居住無制限納税義務者 相続または遺贈により財産を取得した次に掲げる者であって、その財産を取得した時において日本国内に住所を有しないもの。

イ 日本国籍を有する個人であって、①その相続または遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがあるもの、または②その相続または遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの(その相続または遺贈に係る被相続人(遺贈をした人を含みます。)が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)。

ロ 日本国籍を有しない個人(その相続または遺贈に係る被相続人(遺贈をした人を含みます。)が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)。

引用終わり

18歳以上ですので、1人の大人として申告をしなければなりません。

相続税の対象になるのは、中山美穂さんのすべての遺産です。無制限納税義務者というのは、全世界の遺産に対して、日本の相続税を申告するということです。

相続開始後10か月以内が申告期限になります。

独り言

今の国際相続の法律は、武富士事件以降の富裕層の国外居住による相続税節税を防止するために何度も改正されてきました。

しかし今回の中山美穂さんのケースは、決して租税回避を目的にしたものではありません。20歳のフランス在住の若者に対して、母親の死亡後10か月以内に、日本の相続税を申告しろというのは、あまりに過酷ではないでしょうか?

本当にご冥福をお祈りいたします。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。