在留資格とは、外国人が日本で就労等の活動をするために必要な資格です。
我々は税理士なので、在留資格については本当に素人です。資格でいえば、行政書士の範疇です。でも在留資格の素人であっても、税金計算は問題ありません。法人税や所得税の計算にあたって、在留資格(VISA)の種類は関係ないからです。在留資格の種類は関係なく、日本に滞在しているかどうかが大事です。「配偶者ビザだから、税金を損した!!!」なんてことはあり得ません。
ただそれは法人税や所得税に関する話であって、例外があります。相続税です。
相続税は、在留資格(ビザ)の種類によって、税額が大きく異なってくる可能性があります。簡単に解説しましょう。
相続税の課税の範囲
相続税は、最初に”制限納税義務者”と”無制限納税義務者”に分類します。分類する理由ですが、課税の対象を分けたいからです。
“制限納税義務者”…国内の財産のみが日本の相続税の対象
“無制限納税義務者”…国内のみならず全世界の財産が日本の相続税の対象
課税の対象が全く違います。
“制限納税義務者”と“無制限納税義務者”の分類について
詳細は以下のマトリックスで判定します。
1が制限納税義務者
2が無制限納税義務者
大きな考え方としては、外国人から外国人への相続については、日本の相続税の対象にはしないというものです。
相続税における”外国人”の定義とは何でしょうか?法律用語としては、”一時居住者”と言います。
一時居住者…相続開始の時において在留資格を有する者であって、その相続の開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの
つまり過去15年において10年超日本に住所がある外国人は、日本人と一緒で通常の居住者と考えます。過去15年のうち日本に住んでいたのが10年以下でいた外国人であれば、一時居住者に該当する?いえいえ、違うのです。” 相続開始の時において在留資格を有する者であって”というのがクセモノなのです。
この”在留資格”がクセモノ
出入国管理及び難民認定法別表第一(在留資格)の上欄の在留資格とされています。
“上欄の在留資格”とは以下のものがあります。
外交
公用
教授
芸術
宗教
報道
役員・経営
法律・会計
医療
研究
教育
技術
人文知識・国際業務
企業内転勤
興行
技能
この在留資格に含まれないのが以下になるのです。
永住者
日本人の配偶者
永住者の配偶者
定住者
つまりいわゆる”配偶者ビザ”で日本に滞在している外国人は、上記の一時居住者に該当しないのです。つまり日本人と同じと考えられてしまうのです。
結果として、無制限納税義務者に分類されてしまい、日本にある財産のみならず海外の財産も、相続税の課税の対象となってしまうのです。
相続のことまで考えて、在留資格の申請はしないと思います。更新の手間を考えれば、配偶者ビザを取得することもあるでしょう。でも配偶者ビザで日本に滞在するということは、日本の相続税法上は日本人と同じ取り扱いを受けてしまうのです。
最後に
国際相続においては、この数年で度重なる改正が加えられてきました。
海外移住によって不当に相続税の軽減を図る試みに対して、様々な規制が加えられているのは理解できます。
ただ、配偶者ビザで来日した外国人に対して、日本人と同じ課税がされてしまうのは、大きな問題だと思っています。そのような外国人の方は、往々にして海外に大きな遺産を持っていることが多いからです。
法律が意図した課税ではないはずですが、ビザの種類ひとつで大きな課税がされてしまうのは事実です。ビザ取得の際に、本当にそのビザで良いのかを考えてほしいと思います。もしご不明な点がございましたら、プロビタス税理士法人にご相談ください。