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NFTの税務(売却益は雑所得か?)

2021年11月時点で盛り上がっているNFTですが、いまだ国税庁から明確な指針は示されていません。まちのイチ税理士ではありますが、私見をまとめました。
目次

はじめに

2021年11月23日時点に執筆。

この時点で国税庁から通達などは公表されていないと理解しています。

現在NFTに係る税務上の取り扱いについては、明確なルールが公表されていません。本記事の内容は弊社の私見であり、内容の正確性は保証できかねますので、実際に税務判断が必要となるケースでは税理士や税務署に相談の上判断してください。

NFTに関する私見を記載したものであり、当記事の内容に責任を持つものではありません。NFTに関する個別のご相談は受けていません。電話もご遠慮ください。

NFTについて

最近はテレビで見る機会も増えたNFT(Non‐Fungible Token)。ご多分に漏れず、弊社のお客様からNFTの確定申告について問い合わせがありまして、調べてみました。あくまで個人が前提であり、法人は対象外です。

2021年11月23日時点で国税庁からの通達等はありません。

ネットで調べてみると、NFTの売却益は雑所得であるという記載がほとんどのようです。

個人的には、”本当にそうなんだろうか?”という印象で、調べたことを備忘録として残しておきます。

NFTとは?

直訳すると代替不可能なトークンということになります。ビットコインやイーサリアム等の仮想通貨は、あらかじめ総量や供給量が決められていて人間の意志では増減させることができない通貨タイプの暗号資産です。

それに対し、NFTはトークンは発行者が存在し、自由意思によって発行できる資産タイプで、ブロックチェーン上で発行されているため、非代替性が裏付けられたデジタル上の資産ということなんだそうです。

なぜ仮想通貨は雑所得になったのか?

なぜNFTの売却益は雑所得であるというコメントが多いのでしょうか?

それは仮想通貨の譲渡損益が雑所得であるということだからでしょう。ではなぜ仮想通貨の譲渡損益が雑所得になったのでしょうか?

千葉商科大学の泉さんという方の論文を拝承いたしました。

平成 30 年 3 月の財政金融委員会における藤巻健史議員の質問及びこれに対する答弁

 暗号資産の譲渡により生じた損益は原則として雑所得に区分されるという国税庁の見解を示した情報 4 号等が公表された後の平成 30 年 3 月 22 日の参議院財政金融委員会において,藤巻健史議員は「仮想通貨を物と考えれば,これ譲渡所得という考え」もありえたが,「改正資金決済法でこれは仮想通貨を支払手段と位置付けた」ため,国税庁の取扱いは雑所得が原則となったという理解で正しいか,という趣旨の質問を行っている。これに対し

て,藤井健志国税庁次長(当時)は,次のとおり答弁した。

「結論は委員御指摘のとおりでございます。所得税法上,譲渡所得につきましては,最高裁判決などにおきまして,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨と解されておりまして,法令上は資産の譲渡による所得と,こういうことでございます。

 ビットコインなどの仮想通貨につきましては,御指摘の資金決済法上,代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されており,消費税法上も支払手段に類するものとして位置付けられておりますので,外国通貨と同様に,その売却又は使用により生ずる利益は,資産の値上がりによる譲渡所得とは性質を異にするものであるというふうに考えられるところでございます。

 そういうふうに考えられるところでございますので,資金決済法の改正によって位置付けがなされたことも考慮の上,仮想通貨の売却又は使用により生じた利益は譲渡所得には該当せず,どの所得にも属さないということで雑所得に該当するというふうに解しているところでございます。」

 藤井氏は,外貨(外国通貨)と同様に,暗号資産の売却又は使用により生ずる利益は,資産の値上がりによる譲渡所得とは性質を異にするものであると述べている。外貨との関係でいうと,星野次彦財務省主税局長(当時)も,次のとおり答弁している。

「仮想通貨を売却又は使用することによる損益,原則として雑所得に区分され総合課税の対象となるわけでございますけれども,この取扱いは日本円と外貨を交換した場合の為替差益が雑所得として総合課税の対象となることとのバランスを考えれば適当なものと考えております。」

なぜ暗号資産(仮想通貨,暗号通貨)の譲渡による所得は譲渡所得に該当しないのか? : 国会における議論を手掛かりとして

NFTと仮想通貨

上述の千葉商科大学の方の論文による国会答弁が事実であれば、仮想通貨が雑所得に整理されたのは資金決済法で支払手段と定義されたから、ということになります。

NFTが支払手段として定義されていないのであれば、雑所得という分類にするのは早いのではないでしょうか?

NFTの中には支払手段のものもあるようです。それは雑所得になるかもしれません。しかしNFTの中には本当に資産性があるものもあるようです。

そのようなものは譲渡所得という考えはできないのでしょうか?

譲渡所得とは

所得税基本通達33-1などを見ると、譲渡所得の起因となる資産は以下の4つのことが必要になりそうです。

  1. 経済的財産的価値が存在する
  2. 取引の対象物である(市場性を有している)
  3. キャピタルゲイン(資産価値の増加益)またはキャピタルロス(資産価値の減少損)の生じる可能性があるもの
  4. 譲渡所得の起因となる資産以外の資産ではないこと

ポイントは④で、NFTが金銭債権とみなされるかということかと思います。お客様から聞く範囲で言えば、NFTは金銭債権としての性格はないように思います。あくまで現状では、というところですが。

仮に譲渡所得に該当した場合

譲渡所得に該当した場合の課税方法はどうなるでしょうか?

私見では生活に通常必要でない資産に該当するのでは?と考えます。

その場合、以下のような取扱いになります。

  1. 売却価格1個当たり30万円以下のものは非課税(キャピタルロスはなかったものとみなす)
  2. ただし災害・盗難・横領があった場合には、譲渡所得の金額の計算上控除する
  3. 売却価格1個当たり30万円超のものは、譲渡所得として総合課税

最後に

仮想通貨同士間でコインの交換でさえ雑所得として課税されることに、個人的にはいまだに違和感を感じています(仕方がないのですが)。

NFTについても安直に雑所得として課税ということではなく、議論になってほしいと思っています。納税者の担税力の観点も大事ですし、何より納得感のある課税であってほしいです。しがない税理士ですが、私見を書いてみました。

2021年11月23日時点でそのようなコメントをしている税理士のブログはなかったようでしたので、恥さらしを覚悟でコメントしてみました。エラい人の目に留まって、考察の一つに取り上げてもらえれば幸いです。

(税務署の皆様へ。弊社のお客様はまだNFTを売却はしていません。)

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。