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日米租税条約における日本の外国税額控除(米国市民、グリーンカードをお持ちの方向け)

目次

質問

以下のような質問を受けました。

「 国籍はアメリカですが、日本滞在期間は10年を超えます。アメリカでグリーンカードを持っています。アメリカでも所得があって、アメリカで確定申告をしています。二重課税だと思うのですが、日本で外国税額控除の適用を受けることができるでしょうか?」

回答

国際税務をしていて、一番悩むのがアメリカ人の所得税申告です。 アメリカ永住権(グリーンカード)又はアメリカでの市民権を持っていて、日本での居住者(永住者)となっている方というのが一番難しいです。

双方居住者(Dual resident)と言われる状況です。アメリカでの税制も理解していないと正しい申告ができないからです。 もしグリーンカードがなかったとしても払わなければならないアメリカの税金は、日本で外国税額控除ができます

しかし、もしアメリカでの市民権やグリーンカードを持っていることで払わなければならなくなったアメリカの税金は、アメリカで外国税額控除をします。

なお外国税額控除の制度の詳細はこちら

日米租税条約における取扱い

日米租税条約第23条第3項(a)において、合衆国市民である日本の居住者に対する日本の外国税額控除の適用に当たって考慮すべき外国所得税の範囲は、その者に対する市民権課税による所得税額ではなく、その者が市民でないとした場合に合衆国が日本の居住者に対して本条約に基づいて課すことができる所得税額を限度とすれば足りるとされています。

 この条約を踏まえ国内法では、居住者の所得に対して課される外国所得税の額で、租税条約の規定において外国税額控除の計算にあたって考慮しないとされるものは、控除対象外国所得税に含まれないものとされています(所得税施行令222の2④) 

さらに日米租税条約第23条第3項(b)では、合衆国における外国税額控除の適用は、合衆国は(a)に規定する控除を行った後の日本の所得税額を合衆国の所得税額から控除することを認める。そのようにして認められた控除は、(a)の規定に従って日本において控除された合衆国の所得税額を減額させないとしています。 

そして日米租税条約第23条第3項(c)では、合衆国市民が日本で所得税を貸された合衆国源泉所得については、(b)の規定に従って米国において外国税額控除を認める場合には、(a)に規定する所得を米国の国外所得とみなすとしています。

 以上のことから、合衆国における市民権課税による所得税は、その者が合衆国市民ではないとした場合に合衆国が日本の居住者に対して本条約に基づいて課税することができる所得税ではないため、外国税額控除は日本ではなく米国で受けることになります。  

ご覧になっていただきありがとうございました。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。