はじめに
(このブログは2024年1月1日に書いています)
2022年12月15日に令和5年度税制改正大綱が公表されました。
内容は多岐にわたりますが、その中でも我々の専門である国際課税の部分で新しい取り組みが始まりそう、ということが判明しました。特に全世界に展開されている日系のグローバルカンパニーの皆様や多国籍に展開されている外資系企業日本法人の皆様にとっては、実務上関係する部分ですので、簡単に解説したいと思います。
2023年12月の令和6年度税制改正大綱では、より詳細な情報が開示されました。
所得合算ルール(IIR)が導入される見込みだったのですが、令和6年税制大綱によると、実施時期は明記されていません。したがって、2024年以降の実施が不透明になった印象です
グローバル・ミニマム課税の導入
グローバル・ミニマム課税とは、全世界展開をする大企業の日本法人に対して、通常の日本の法人税に加えて、追加でグローバル・ミニマム課税がされるというものです。対象になる企業グループのイメージは以下の通りです
税制大綱では国際最低課税額という金額に対して、一定の税率を乗じることになっています。
今までにない特徴は、申告と納付の時期です。申告と納付は1年と3か月後が期限になっています。通常の法人税の申告より1年遅れる形になっています。
また併せて、多国籍企業グループの情報を同じタイミングでe-taxを通じて提供することになっています。
2024年4月1日以降開始の事業年度から適用開始となっています。
導入の背景
先進国が参加するOECDでは、2021年10月、グローバル・ミニマム課税について導入が決定されました。今回のグローバル・ミニマム課税はその決定に基づいた実務的な取り組みであると理解されます。
グローバルな大企業は、無形資産などをタックスヘイブン国などの軽課税国に移転することにより、税負担を軽減させてきました。いわゆるBEPS問題(外国の低税率に由来した利益移転・課税ベースの浸食)です。今後は、無形資産がどこにあっても、最低限の税率(OECDモデルケースでは15%)は負担しなければならなくなります。具体的な税負担額の計算方法については、まずは実効税率を算定する必要があります。個別計算所得等の算定して、それを実際の税負担額で除することによって、実効税率を算定します。個別計算所得等のイメージは以下の通りです。
今回の対象者
企業グループ(一定の多国籍企業グループ等に該当する者に限る)のうち、各対象会計年度の直前の④対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5000万ユーロ相当額以上であるものをいいます。2024年1月1日時点で1ユーロが155円ですので、1160億円程度になります。
今回の税制改正では、グローバル・ミニマム課税は外資系企業の日本法人は対象にならず、日本に本社がある多国籍日系企業が対象になります。しかしe-taxによる情報申告制度については、外資系企業の日本法人も対象になりますのでご注意ください。
7憶5000万ユーロは日本円でおよそ1000億円ほど。現在の移転価格における最終親会社等届出書を提出する義務がある内国法人とほぼ同じです。
現行の移転価格税制に係る文書化制度の対象になっている法人と対象がおおよそ同じになってくるはずです。
補足を2点ほど
その1
日本にはすでにタックスヘイブン税制が存在しており、軽課税国にある実質的なペーパーカンパニー等に対して課税ができる仕組みになっています。その上に今回のグローバル・ミニマム課税が実行されると、二重課税になる可能性が考えられます。その点、今回の税制大綱では、タックスヘイブン税制の対象企業を絞り込む取り組みがされているようですが、まだ不十分に思えます。今後の動向を見守りたいです。
その2
今回のグローバル・ミニマム課税の導入は、OECD加盟国において同時的に導入されるとのことです。日本のみならず、全世界で協調して導入されるということ。全世界で協調して対応していく仕組みが必要になってくると考えます。
その点、弊社プロビタス税理士法人は、BOKS internationalという会計事務所ネットワークに加盟しており、世界中にある会計事務所と強調してサービスを提供できる体制があります。全世界に展開されている日系のグローバルカンパニーの皆様や多国籍に展開されている外資系企業日本法人の皆様にサービス提供できる体制が整っています。
グローバル・ミニマム課税についてご不明な点がございましたら、何なりとお申し付けください。
- バックオフィスのコストを抑えたい
- 今の顧問税理士が国際税務に詳しくない、英語対応してくれない
- 会計事務所に質問しても、すぐに答えが来ない