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国際税務の課税ロジック =寄附金課税と移転価格税制=

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目次

はじめに 寄附金課税と移転価格税制の区分の基準

日本の法人と国外関連者との間で行われた取引の対価が適正でないと認められた場合に、寄附金課税と移転価格課税のいずれかが適用されます。しかしいずれが適用されるのかはわかりにくいです。

移転価格事務運営指針2-19をみると、寄附金については以下のものが挙げられています。

  • 資産の販売・役務提供を無償で行っている場合
  • 資産の販売・役務の提供について対価の支払いを受ける又は対価の支払いを行うが、実質的に資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与を認められる部分がある場合

ただこれ以上の文言はなく、判断が難しいです。通常の経済取引と認められない場合や、贈与と認められる部分がある場合に寄附金とされるという見解や、贈与の意思がある場合に寄附金とするという見解があるようです。

また意識的であろうと無意識であろうと租税回避の意図があれば寄附金課税であるという見解もあります。それ以外であれば移転価格税制の対象ということです。

つまり契約や請求の実態がなければ寄附金課税で、実態があれば移転価格税制というのが私どもの印象です。

寄附金課税と移転価格税制の違い

寄附金課税と移転価格税制には以下のような相違があります。

まず実体的な点では、寄附金課税は時価が基準とされているのに対し、移転価格税制では独立企業間価格が基準であり、その具体的な算定基準は法律に定められています。

また手続きにおいては、移転価格税制においては推定課税や同種事業者への質問検査権が認められており、納税の猶予制度も認められているが、寄附金税制においてはそのような規定はありません。

更正の請求期限においても寄附金課税は5年であるのに対し、移転価格税制は6年です。

ご存知の通り、移転価格税制では事前確認が利用できるが、寄附金においてそのような法令はありません。また租税条約があれば、移転価格においては相互協議ができるが、寄附金課税は相互協議の対象として認められていません。

寄附金課税の具体例 

【その1】海外子会社の赤字を補填した

一般的に、海外子会社の赤字を補填するために、日本法人が金銭を支出すればそれは寄附金課税の適用がされると思います。

その場合、なぜ海外子会社が赤字になっていたのかの検証が必要です。もし日本法人との取引価格が高すぎたために赤字になっていたのであれば、それは移転価格の世界になります。

販売価格の事後的な修正、いわゆる価格調整金(事務運営指針2-20を参考)であるという主張ができるかもしれません。

【その2】海外子会社への出張支援

海外の子会社に人を送り込んで支援するということはよくあります。その場合、本来はその海外で人を雇って事業活動をすべきなのに、日本法人の人員で代行したとして、対価を回収していなければ寄附金課税の対象になります。

そのような指摘を税務調査において受けた場合には、その送り込んだ人員の具体的な現地での活動内容を精査する必要があります。本当にそのすべてが対価を回収すべき役務提供なのかという検証が必要です。

またその海外子会社との取引のすべてを精査すべきです。例えばその海外子会社からロイヤリティを受け取っている場合、そのロイヤリティにその人品費用が含まれていないのかということを検討すべきです。

【その3】海外での広告宣伝費

日本法人が行う海外での広告宣伝費の負担が寄附にあたるかという議論です。その判断材料は、その広告宣伝が日本法人にとってメリットがあるのかということです。

そのような指摘を税務調査において受けた場合には、海外の広告宣伝であったとしても日本の販売に役立っているということを立証していくことになります。

ただ全額を損金算入が認められるかは微妙で、一定の負担額のみが損金算入が認められ、残りは寄附金の課税を受けることになるかもしれません。

【その4】給与の格差補填金

海外の子会社に出向している従業員について、海外子会社から人件費を受け取るのは一般的です。しかし特に東南アジアなどの場合、給与水準が低いため、受け取る人件費が日本の給与水準より低い場合があります。その差額が寄附金に該当するかということが論点になります。

日本の法人税において、海外の出向者について、現地東南アジアの給与水準と日本での給与水準の差額を、日本本社で補填することは認められています。(法人税基本通達9-2-47)

したがって、現地での給与水準が以下に妥当であるかを立証すればよいことになります。逆に言うと、海外に従業員を出向させる場合には、その子会社から一定金額を出向対価として支払わせるのとともに、その金額が妥当である客観的な資料を準備しておくことが大事です。

【その5】海外子会社からのマネージメント費用の未回収

海外子会社との契約や覚書などで、海外子会社の売上の数パーセントをマネージメント費用(本社費用、マネージメントフィー)として回収することがよくあります。

仮にその海外子会社が赤字であったなどの理由でそのマネージメント費用を回収していなかった場合には、それは寄附金課税の対象となるでしょう。

仮に回収していたとしてもその金額が少なすぎる場合には、移転価格における独立企業間価格との差額に対して課税することになります。ただ中小企業の場合には、そのような移転価格の課税を受ける可能性は高くないと考えます。

したがって、中小企業の場合のおいては、まずは適切な契約書や覚書を締結し、妥当なマネージメント費用を回収することを考えましょう。

ご覧になっていただきありがとうございました。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。