税務調査官から直接聞いた話「今年の税務調査の注力ポイントは海外に子会社を持っている個人」|タックスヘイブン税制・CRSの仕組みを解説

目次

1. 税務調査官から聞いた「今年のポイント」

プロビタス税理士法人では多くの税務税務調査を担当しています。先日の税務調査の最中に雑談で、税務調査官と話す機会がありました。「今年の税務調査でどういう方が対象になっていますか?」と聞いたところ、明確な答えが返ってきました。

税務調査官のコメント(2026年):「今年のポイントは、海外に子会社を持っている個人です。海外に子会社を持っていることは、租税条約の情報交換などで把握することができます。また、国外送金取引も国外送金等調書で税務署は把握しています。」

これは「今後調査するかもしれない」という話ではありません。現時点で実際に調査対象の選定が進んでいるという情報だと感じました。

「自分は大丈夫だろう」と思っている方も多いと思います。しかし税務当局が保有している情報の量と精度は、多くの方が想像しているよりもはるかに高くなっているのを実感しています。

2. なぜ「バレる」のか:税務署が情報を把握する3つの経路

「海外の子会社のことは、日本の税務署にはわからないはずだ」——これは10年以上前であれば半分正しかったかもしれません。しかし現在は違います。

 情報源把握される内容
CRS(共通報告基準)日本居住者が保有する海外口座の残高・利子・配当・売却益。約150か国・地域が参加。年間約206万件の情報が国税庁に届く。シンガポール・香港・ケイマン等も対象。
国外送金等調書(国内送金税法)100万円超の国外送金・受領について、国内金融機関が税務署に提出する義務がある。海外子会社への送金記録・受取記録はすでに税務署のシステムに蓄積されている。
租税条約に基づく個別情報交換日本は88の租税条約等を締結・156か国・地域に適用。特定の納税者について個別に情報を要請することが可能。

■ CRSの規模:3,000〜4,000倍の情報量

CRS開始前の租税条約に基づく情報交換は年間数百件程度でした。現在のCRSは年間約206万件で、約3,000〜4,000倍の情報量です。シンガポール・香港・スイス・ケイマン諸島・英領バージン諸島など、かつて「税務当局が情報を入手しにくい地域」と言われた場所の大部分がすでに参加しているそうです。

国税庁はどのように活用しているか

国税庁が持っている情報の組み合わせ(実際の活用例)
CRS:「シンガポールのA社口座に3,000万円の残高あり」
国外送金等調書:「過去3年間に合計5,000万円の送金記録あり」
法人設立情報:「A社の登記上の株主は日本居住者B氏」
国外財産調書:「B氏は提出していない(または記載なし)」
確定申告書:シンガポールにおいて、どのように資産を構築したのかの経緯が不明
→このようにして、調査対応を選定していくのだと推測します

3. 調査で何を調べるのか

税務調査官が「海外に子会社を持っている個人」を調査する場合、主に以下の2点を確認します。

■ ①日本で申告すべき所得の漏れがないか

日本居住者は全世界所得課税です。本来は日本で申告すべき所得を海外子会社に付け替えていないかは、一番のポイントです。そして海外子会社から受け取った役員報酬・配当・貸付利息などは、日本の所得税の課税対象です。これらが日本の確定申告に含まれていない場合、申告漏れとして追徴されます。

■ ②タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)の対象になっていないか

子会社が所在している国が軽課税国(租税負担割合が一定以下)で、かつ事業の実態がない「ペーパーカンパニー」等に該当する場合、タックスヘイブン税制が適用され、子会社の所得が親(個人)の所得に合算して課税されます。

重要:個人も対象です。タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)は、法人だけでなく日本居住者の個人も対象です。「自分は個人だから関係ない」とお考えの方が多いですが、個人が直接・間接に50%超を保有する外国子会社も対象になります。

4. タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制)の基本

タックスヘイブン税制(CFC税制:Controlled Foreign Company)は、軽課税国の子会社を通じた租税回避を防ぐために1978年に導入された制度です。現在も継続的に強化されています。

要件・項目内容
対象となる外国子会社居住者・内国法人等が直接または間接に株式の50%超を保有する外国法人(「外国関係会社」)。個人も対象。
ペーパーカンパニー等の場合租税負担割合が27%未満の場合、会社単位で全所得を合算課税
実態ある企業の場合経済活動基準を満たしても、租税負担割合が20%未満なら受動所得(配当・利子・ロイヤリティ等)を合算課税
適用免除(少額免除)合算対象となる金額が2,000万円以下かつ一定の要件を満たす場合は免除
主な軽課税国・地域(代表例)英領ケイマン諸島・英領バージン諸島・バミューダ・バハマ等(実質税率0%〜) 香港・シンガポール・マレーシア等(所得の種類によっては20%未満になりうる)
課税の仕組み(個人の場合)雑所得として確定申告に合算。最大55%の税率が適用されうる

租税負担割合の計算は複雑です。「法人税率が高い国だから大丈夫」とは必ずしも言えません。特定の優遇措置により実効税率が下がるケースがあります。

「ペーパーカンパニー」に該当するかどうか:経済活動基準(4つ全て満たすことが必要)

  • 事業基準:主たる事業が株式保有・貸付・知的財産保有等でない
  • 実体基準:事務所・工場・店舗等の固定施設を持つ
  • 管理支配基準:本店所在地国で事業の管理・支配・運営を行う
  • 非関連者基準または所在地国基準:主として非関連者と取引、または所在地国で事業を行う

「現地に事務所と従業員がいる」という場合でも、実態が伴っているかどうかを文書で証明できる状態にしておくことが重要です。

詳しくは以下のページもご参照ください。

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5. あなたは対象になりますか?確認チェックリスト

🔴 特に注意が必要な方🟡 確認が必要な方
軽課税国(香港・シンガポール・ケイマン等)に子会社を保有する個人

海外子会社から役員報酬・配当・貸付利息を受け取っているが日本の確定申告に含めていない

海外子会社に資金を送金しているが、送金の目的・資金の流れが書面で整理されていない

国外財産調書を提出していない(海外財産が5,000万円超の方は提出義務あり)

海外子会社が事業の実態を持たない「ペーパーカンパニー」に近い状況
海外子会社の所在国の租税負担割合が20〜27%程度(ギリギリのライン)海外子会社から受け取った所得を日本の確定申告に含めているが、計算方法に自信がない

タックスヘイブン税制の申告別表(確定申告書への付表)を作成したことがない

M&Aで取得した海外グループ企業の中にタックスヘイブン国所在の子会社が含まれている

6. 税務調査の連絡が来たら:最初の対応で結果が変わる

税務調査の事前通知(電話)が来た場合、最初の対応が非常に重要です。

やってはいけないこと

  • 調査官の求める日程をその場で承諾する(税理士に相談する時間を確保する必要がある)
  • 調査官に書類や情報を先に渡す(範囲の特定をしてからにすべき)
  • 「問題ない」と思って単独で対応する(国際税務の調査は専門性が高い)

まずやるべきこと

連絡が来たら、まず専門の税理士に相談する。税務調査の連絡を受けた後、調査開始日までの間に税理士への相談・委任が可能です。「まず自分で対応してから相談する」ではなく、連絡を受けた時点で即座に相談することで、最初から有利な立場で対応できます。

プロビタス税理士法人は国際税務(タックスヘイブン税制・海外子会社の申告・国外財産調書)に特化しており、税務調査の立会いにも対応しています。税務署とのやり取りはすべて弊社が担当しますので、お客様が直接対応する必要はありません。

7. よくあるご質問

Q:海外子会社の存在を申告していませんでした。今からでも対処できますか?

A:はい、対処できます。税務調査の連絡が来る前であれば、自主的な修正申告・期限後申告が可能です。この場合、加算税が軽減(または免除)される場合があります。調査の連絡が来た後でも、対応の仕方によって結果は大きく変わります。まずはご相談ください。

Q:シンガポール・香港に子会社があります。自動的にタックスヘイブン税制の対象になりますか?

A:自動的に対象にはなりません。シンガポール・香港は法定税率が17〜16.5%と比較的高いため、事業の実態があれば経済活動基準を満たし、タックスヘイブン税制の対象外となるケースも多いです。ただし「所得の種類」や「実際の租税負担割合」によっては対象になるケースもあります。個別の確認が必要です。

Q:国外財産調書とは何ですか?提出していないとどうなりますか?

A:12月31日時点で保有する海外財産(不動産・預金・株式等)の合計が5,000万円を超える場合、翌年6月末までに「国外財産調書」を税務署に提出する義務があります。未提出または記載漏れがある場合、過少申告加算税等が加重(1.5倍)されます。また、国税庁のCRS情報との照合で申告漏れが発覚しやすくなります。

Q:海外子会社に送金した記録は税務署にわかるのですか?

A:はい。国内の銀行は100万円を超える国外送金について「国外送金等調書」を税務署に提出する義務があります。送金の記録はすでに税務署のシステムに蓄積されています。「海外への送金だからわからないはずだ」は現在では通用しません。

Q:タックスヘイブン税制の申告はどのようにしますか?

A:個人の確定申告書に別表(外国子会社等に関する明細書等)を添付して申告します。子会社の現地の財務諸表・税務申告書・租税負担割合の計算が必要で、専門的な知識が必要です。プロビタス税理士法人では、タックスヘイブン税制の申告(別表作成含む)に対応しています。

8. プロビタス税理士法人にご相談ください

「海外子会社を持っているが、タックスヘイブン税制の対象かどうかわからない」「税務調査の連絡が来た」「過去の申告に不備があるかもしれない」——どのような状況でも、まずはご連絡ください。

  • タックスヘイブン税制の対象か否かの判定・租税負担割合の計算
  • 外国子会社合算税制の申告(確定申告書別表の作成)
  • 国外財産調書の作成・提出
  • 税務調査の立会い・交渉対応(英語対応可)
  • 過去分の修正申告・期限後申告のサポート
まずはお気軽にご相談ください 税務調査の連絡を受けた方はお急ぎください 英語対応可 | ビデオ会議・Slack・メール | メール24時間受付 ▶ お問い合わせ:https://probitas.jp/web/contact-2/

本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。税制は改正される場合がありますので、最新情報は専門家にご確認ください。

本記事に記載の税務調査官のコメントは、特定の税務署・特定の調査官の見解であり、国税庁全体の方針を示すものではありません。個別の税務調査への対応については必ず専門家にご相談ください。

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