はじめに
ここ最近増えてきたお問い合わせで、「海外の企業で働いているのですが、確定申告はどうしたらよいでしょうか?」というものがあります。経緯を聞くと様々なのですが、コロナによるリモートワークの一般化や、海外給与水準が高さなどで、海外の企業に雇用されるという働き方をされる方が増えていると実感します。
日本から海外の企業にリモートワークするの場合の確定申告と社会保険についてご案内します(なおビザ(Visa)については我々の専門外ですので対象外とさせてください。もし必要であれば提携している行政書士をご紹介いたします)。
なおこの場合の「海外企業」ですが、日本に子会社や支店などの拠点がないものを想定します。日本に子会社がある外資系企業は対象外です。また日本で働くことを想定しています。日本国外から働く場合にはこの限りではありません。
リモートワークとは
日本に居ながら海外の会社から報酬をもらって働くことをイメージしています。ZOOMなどで会議に参加したり、Googleドライブを介してスプレッドシートを編集したり、というイメージです。
場合によっては、本社に出張することもあるでしょう。その出張は短期間である前提です。出張が長期間の場合には、確定申告の内容が変わってきますのでご注意ください。
なお”長期間”は国によって異なってきます。”長期間”の定義は租税条約によって定められていますが、その定義は租税条約によって異なってきますので、疑問があれば税理士や税務署に確認をしてください。いわゆる”日本在住”という前提です。
“働く”とは・・・雇用契約の場合
海外企業との契約内容が重要です。2つの可能性が考えられます。雇用契約と業務委託契約です。雇用契約とはつまりオフィスワーカー(いわゆるサラリーマン)ですし、業務委託契約とはフリーランスです。
まずは雇用契約の場合の確定申告をご紹介します。
日本に子会社などがない海外企業に従業員として直接雇用される場合です。役員であることは想定していません。
雇用契約の場合には給与所得になります。国内の企業からのみならず、海外企業からの給与も給与所得になります。給与所得の計算方法に従って、所得金額が計算されます。つまり給与所得控除も国内企業と同じように適用されます。
税金の計算方法は、国内からも海外からも同じです。ただ一つ大きな違いがあって、海外の企業からの給与には、日本の源泉徴収がされないし、年末調整もされない、ということです。
したがって、国内の企業からの給与だけであれば、多くの場合確定申告が不要ですが、海外企業からの給与には必ず確定申告が必要になるということが注意点です。
また確定申告の内容は非永住者と非永住者以外の個人(つまり居住者)とは異なってきます。非永住者の確定申告は複雑です。詳しくはこちらもご参照ください。
参考・・・役員の場合
ちなみに海外企業の役員が日本にいる場合はどうでしょうか?
役員報酬に関しては、その企業のある国で課税されるのが一般的です。したがって従業員の場合と違って、二重課税になります。日本の確定申告において、外国税額控除を適用する必要があります(ただし日米租税条約の関係で、アメリカの場合だけ例外あり)。
“働く”とは・・・業務委託契約の場合
たとえばIndeedを見ると、業務委託のリモートワークの求人募集が多くされているのがわかります。フリーランスというイメージの仕事がほぼすべてで、エンジニアやバックオフィスの仕事が多い印象です。
業務委託契約の場合の確定申告をご紹介します。
業務委託契約の場合には事業所得または雑所得になります。税金の計算方法は、国内からも海外からも同じです。また海外の会社からの業務委託に関しても、青色申告の対象になります(事業所得の場合)。自宅で働くのが多いと思いますが、家賃の一部や水道光熱費などが経費になると思われます。
また本業があって、その本業の傍ら、海外の仕事を副業として行っている場合には雑所得になります。
社会保険に関して
日本に居住している場合には、日本の社会保険の加入が必要です。
雇用契約であったとしても、厚生年金に入ることはできないようです。(それはデメリットかもしれません) したがって、お住まいの自治体に国民年金と健康保険の手続きをする必要があります。 詳しくは各自治体にお問い合わせください。
最後に
ひとえに”海外”といっても、国によって制度は様々なようです。また国家間でそれぞれ締結されている租税条約によっては、取り扱いが違うこともあり得ます(租税条約は様々な種類があります)。プロビタス税理士法人では、海外の企業にリモートワークで働いている方の確定申告の実績経験が多く、多数請け負っています。確定申告をご依頼いただけそうであれば、お気軽にお問い合わせください。