プロビタス税理士法人では、多くの国際税務関連の税務調査対応をしています。国際税務関連の税務調査で、問い合わせが多いのが外国税額控除関連です。
実際に弊社で問い合わせがあった事例をご紹介します(なお守秘義務があるので、実際とは少し変更しています)
税務調査の経緯
日本に在住の長い外国人の方。アメリカからの年金で日本に在住していました。
アメリカの年金は、アメリカで源泉徴収されています。その源泉徴収されたアメリカの税金を外国税額控除により還付を受けていました。
ある日、見知らぬ電話番号からの電話が…
電話を取ってみると税務署からでした。
「税務調査に伺いたいので、日程調整させてほしい。対象は過去5年分です。」
何のことかわからず、ビックリしました。適正に確定申告しているつもりでした。青天の霹靂です。
「なんで、税務調査なんですか?」
思わず聞いてしまいました。そこで税務署の調査官に言われました。
「外国税額控除を中心に確認したいと思っています」
外国税額控除については、あまり知識がなく、アメリカで源泉徴収されているから、日本の確定申告で外国税額控除を行っていました。税務調査の電話があってはじめて自分が間違って申告していたことに気づきました。しかし、何が正しいのかわかりません。税務署からの電話も高圧的で、恐怖感を覚えました。
そこで、個人の外国税額控除について、情報発信しているプロビタス税理士法人に連絡を取りました。
プロビタス税理士法人の対応
すぐにビデオ会議を実施して、状況を伺いました。費用をお伝えして、了解をいただいた後に、過去5年分の確定申告書とSupport documentsを確認しました。
外国税額控除が過大であったことを把握し、そのうえで税務署と交渉をしました。適正な外国税額控除の修正申告書を作成し、お客様と税務署に了解をもらいました。
仮想隠蔽の意図はなかったことを、税務署に説明をして納得してもらいました。
ご依頼があってから約1か月でほぼ終了することができました。
日本の税務の知識のない外国人である自分だけだったら、日本の税務調査のプレッシャーに耐えることができなかっただろうというコメントをもらいました。
(実録終わり)
外国税額控除の税務調査4パターン
外国税額控除で調査があるのは以下の4つのパターンです。
控除限度額の計算が間違っている
外国税額控除は、海外で課された税金がすべて控除できるわけではありません。日本で支払うべき税金以上のものは還付されません。その”日本で支払うべき税金”を控除限度額と言います。
ただその控除限度額の計算は非常に煩雑です。具体的には以下の計算式で計算されます。
所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
その控除限度額が間違っている場合に、外国税額控除の控除額が間違ってしまいます。
控除限度額の計算が間違っているかどうかを確認するのは比較的簡単です。税務署の調査官も、間違っていることはすぐに把握されると思います。その結果、税務調査に移行するパターンがあります。
外国税額控除の対象とはならない外国税金を控除している
外国税額控除の対象となる外国税金について以下は含まれないとされています。
外国またはその地方公共団体により課される税であっても、次のものは外国所得税に含まれません。
1 税を納付する人が、その税の納付後、任意にその金額の全部または一部の還付を請求することができる税
2 税を納付する人が、税の納付が猶予される期間を任意に定めることができる税
3 複数の税率の中から税を納付することとなる人と外国もしくはその地方公共団体またはこれらの者により税率を合意する権限を付与された者との合意により税率が決定された税のうち一定の部分
4 外国所得税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm
具体的には中国の増値税、アメリカの自営業者税などは外国税額控除の対象になりません。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/06/01.htm
外国税額控除の対象とならない税額を控除している場合に、お尋ねが来る場合があります。
租税条約で定められている限度税率を超える税額を控除している
日本で外国税額控除の対象として認められるのは、本来払うべき外国税額のみになります。
例えば、アメリカで考えてみましょう。非居住者に対して配当やロイヤリティを支払う場合の源泉徴収税率は30%とされています。しかしW-8BENを提出すれば10%に軽減されます。それは日米租税条約で、配当やロイヤリティの税率が10%と定められているからです。仮にW-8BENの提出を失念して30%の源泉徴収をされた場合、その30%の税金のすべてが外国税額控除できません。10%のみが対象となります。
このあたりは、国税庁がシステムを開発して、租税条約の税率を超える税率を外国税額控除している人を機械的に探しているみたいです。その引っかかった人にお尋ねを出しているようです。
日米租税条約23条違反(米国国籍、グリーンカード保有者)
アメリカの市民権を有している人、またはグリーンカード保有者は、アメリカにおいて全世界所得課税です。そして日本で税務上の居住者と認定されれば、日本でも全世界所得課税となります。二重課税となります。その場合の注意点は以下にまとめました。上記の実録は、まさにこの④に該当する事例です。最近はこの件の問い合わせが急増しています。
最後に
外国税額控除の仕組みはとても煩雑です。
プロビタス税理士法人は、外国税額控除の対応の実績が多いです。
驚かれるかもしれませんが、税務署の担当官も外国税額控除の知識が多いわけではありません。時には誤った指摘もありました。
なるべくご依頼いただいた納税者の利益になるように、調整をさせていただいて、結果を丁寧に説明させていただきました。
確定申告は毎年発生するものです。税務調査の後も日本で確定申告をしなければなりません。来年以降も納得した形で確定申告するためにも、すべてを理解していただくことが重要だとプロビタス税理士法人は考えています。
税務調査はとても不幸なことです。しかしプロビタス税理士法人にご依頼いただいたら、なるべく納得してもらった形で税務調査が完了するように、コミュニケーションを重視して対応して参ります。
お客様の声
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以下もご参照ください。