税理士の先生へ:ご自身の「時給」を答えられますか?~Notionを活用した業務管理システム構築のススメ~

プロビタス税理士法人の代表、片山です。私は自分の時給を把握しています。

おかげさまで多くのお客様からご依頼をいただき、お客様は100社以上、スタッフも10名近くまで増えました。しかし、私には今の会計業界に対して、ある種の危機感があります。

2002年の税理士報酬自由化以降、顧問料や決算料の水準はほとんど上がっていません。2002年といえばデフレの最盛期、マクドナルドのハンバーガーが59円だった時代です。2025年現在、ハンバーガーは当時よりはるかに高くなっていますが、税理士報酬は据え置きのままです。むしろ、当時の報酬規程よりも下がっています。たしかに当時とくらべてテクノロジーの進化はありますが、それは他の業界だって同じです。

物価や人件費は高騰する一方です。東京都心では、時給2,000円でもなかなか応募が集まらないのが現状です。事務所の運営コストは上昇しているのに、報酬水準は変わらない。なぜでしょうか?

理由はいくつか考えられます。一つは、需要と供給のバランスです。税理士の数は増加傾向にあり、供給過多の状況になりつつあります。一方で、少子化などにより、顧問先の絶対数は減少していく感覚があります。

しかし、私が考える最大の原因は、多くの税理士が「経営」を苦手としていることではないでしょうか。

インターネット上には「月額顧問料1万円」「所得税申告料5万円」といった低価格を謳う会計事務所が溢れています。果たして、その価格で本当に利益が出ているのでしょうか?

おそらく、個別の顧客ごとの採算性を正確に把握できている事務所は少ないでしょう。会計事務所は在庫を持たないビジネスだからこそ、どんぶり勘定になりがちです。だからこそ、今こそ「経営の見える化」が最も重要だと私は考えています。

これは税理士や会計事務所に限った問題ではないと思っています。弁護士事務所や司法書士事務所、そして社会保険労務士事務所や行政書士なども値上げができていないように見えます。同じ悩みを抱えているのではないでしょうか?


「見える化」の難しさ、そしてNotionとの出会い

言うは易く行うは難し。創業当初はExcelで進捗管理をしていましたが、お客様とスタッフが増えるにつれて限界を感じ始めました。

顧客管理シート、マニュアル、議事録の保管場所がバラバラで、必要な情報を探すのに毎回5分もかかっていました。5分は大した時間ではないように思えますが、積み重なれば膨大な時間のロスになります。

さらに深刻だったのは、納税管理の漏れです。お客様へのダイレクト納付の案内が漏れて延滞税を負担したり、最悪の場合、顧問契約を解除される事態も発生しました。事務所が大きくなるにつれ、一人でやっていた時にはなかった「管理」の問題が次々と出てきたのです。

そして、もう一つが採算性の問題です。一人でやっていた時は感覚で分かっていましたが、スタッフが増えると、個々の案件に誰がどれくらいの時間を費やしているかが見えなくなります。

「従業員一人のお給料を500万円払うには、1,000万円以上の売上を担当してもらわないといけない」という先輩の話を聞いたことがありますが、これは本当に正しいのでしょうか?一つの案件に複数のスタッフが関わるのが当たり前の中で、「従業員一人あたりの売上」だけをKPIにするのは無理があると私は考えました。そのKPIでは、単価の安い仕事は誰も担当したくはありません。

そこで我々がたどり着いたのが、**「1時間あたりの売上」**をKPIとする管理方法です。つまり時給です。これを実現するためには、スタッフがどのクライアントに何時間使ったかを正確に記録する「時間管理」が必要不可欠でした。以下が、時給管理についての私のXです。


Notionの導入とその目的

試行錯誤の末、私たちはNotionの導入を決めました。主な目的は以下の4つです。

  1. 事務所の全情報の一元管理 情報を一か所にまとめることで、探す手間をなくします。
  2. 納税などの進捗管理 納税漏れや申告漏れを防ぐための仕組みを構築します。
  3. スタッフの時間管理と採算性管理 誰が、どの案件に、どれだけの時間を費やしているかを把握します。
  4. スタッフ自身の業務管理 スタッフが自主的に仕事に取り組める仕組みを作ります。

なぜNotionを選んだのか?

Excelやスプレッドシートでの管理は限界でした。代替ツールとして「MyKomon」や「kintone」も検討しましたが、MyKomonは規模が大きすぎるため不要な機能が多く、kintoneはプラットフォーム費用が割高に感じました。

最終的に行き着いたのがNotionです。10名程度の事務所にとっては、コストパフォーマンスに優れ、柔軟性の高い最適なツールだと判断しました。


Notion導入の成功と失敗から学んだこと

Notionは非常に拡張性が高く、感動するほど便利なツールです。しかし、デメリットもあります。

  • 繰り返しタスクに弱い 税理士業務は毎年・毎月同じことの繰り返しですが、Notion単体では繰り返しタスクの管理が苦手です。
  • 設計が重要 簡単にデータベースやビューを作れる反面、安易に作りすぎると乱立し、かえって使いにくくなります。導入にあたっては、まずしっかりとした「設計図」を作成することが不可欠です。

(あとスターターキットを提供する事業者が多いですが、恐らくうまくいきません。事務所の運営指針は、先生によって様々だからです。最初はイチから自力で作られた方がきっと成功します。)


私たちがNotionで実現したこと・しなかったこと

私たちは、すべての業務をNotionで完結させようとはしませんでした。複雑になりすぎることを避けるため、役割分担を明確にしたのです。

  • Notionで管理すること 毎月の顧問業務など、「月単位」の仕事の進捗管理に絞りました。
  • Notionで管理しないこと 日々の細かなコミュニケーションはSlackで行い、売上管理はMoney Forwardをメインツールとして活用しています。Notionはあくまで、これらのツールを繋ぐ「ハブ」として位置づけています。

また、個々の確定申告業務などの細かいタスク管理は、あえてシステム化しませんでした。日々の業務における微妙な差異は、スタッフと顔を合わせるコミュニケーションで解決する方が効率的だと考えたからです。


現在の我々のNotionのご紹介

現在の本当に簡単なシステム構成です。データベースは6個しかありません。Notionを使う上では、データベースはなるべく少なくして、そしてビューを加工することにすることがお勧めです。

いまのNotionの画面

このトップページから、以下にアクセスできます。

・タスク管理

・議事録管理

・顧客一覧

・ナレッジ管理(マニュアルなど)

その他多くのビューを用意しています

日々の業務の入力

日々の業務は、カレンダービューから入力します。

スタッフごとの画面

そしてこちらがスタッフが確認する画面です。その月に行わなければならない業務一覧が表示されます。

今月の仕事の一覧が表示されます。

  • 今月にやらないといけない税務顧問
  • 今月にやらないといけない記帳代行
  • 今月の申告
  • 今月の決算(決算対策や消費税の確認など)

この画面を通じて、スタッフは今月中の仕事を把握できます。

その他管理していること

消費税の納税義務判定

いま会計事務所の一番の悩みは消費税が難しすぎる、ということではないでしょうか?特に小規模企業を担当していると、決算前に検討しなければならないことが多すぎます。インボイス、簡易課税 etc。しかしスタッフは日々の業務に忙しく、検討を忘れがち。そして、さらに問題は検討したのはいいけど、その検討結果が残っていない…

そこで、決算の1か月前にタスクを生成する仕組みにしています。

納税の管理

最近は税務署から法人税の中間納付の納付書が送られて来なくなりました。電子納税を推進するためだそうですが、納税者の納税をサポートするという業務を放棄してしまったようです。

会計事務所がそのサポートをする必要があります。納税のタイミングでタスクを生成して、スタッフに注意喚起する仕組みです。ただ以下の画面は源泉所得税の納付になります。

その他、東京の税理士法人であれば毎年提出義務がある顧問先名簿と従業員名簿も出力できます。そして、証票点検の際に必要になる業務管理簿も出力できます。

採算性の管理について

各スタッフがそれぞれのタスクにおいて要した時間は、簡単に把握することができます。そしてこれをCSV形式でエクスポートすることも簡単です。

売上の情報はMoney Forwardで管理しています。Excelでの加工が必要になりますが、vlookupを使って、1時間当たりの時給を算出できるようになりました。

本当に感動しました。Money ForwardでAPIを公開してもらうか、Notionとつながるモジュールを開発してくれればいいのですが、Money Forwardさんにお願いしたところ、断られました…

したがって、当面はExcelで加工するというひと手間は残りそうです。

以下の画面は、先月の顧問先ごとの所要時間をグラフで表示したものです。

想定される質問

システム構築の期間

私は2024年の9月にNotionによるシステム導入を決めて、ある程度完成したなと思ったのは2025年の9月です。実質12か月かかってしまいました。

ただ、以前お願いしていた専門家の依頼を解除したのが、2025年の6月でした。なので実質的には3か月と言えるかもしれません。9か月間ほどは試行錯誤の時期だったのですが、ただその間に、自分なりにNotionを勉強して、必要最低限の知識は身に着けることができました。

Notion AIなどの新機能

Notionは日々進化しています。ただそれにあわせてシステム構築していくことは考えていません。スタッフや私の習熟に係る時間も無視できないからです。

Slackなど外部ツールとの連携もできるようですが、現時点では考えていません。あまり特別な機能を使うよりは、なるべくシンプルにしたい、それが結果的に一番安く収まると考えています。

専門家の選び方

今回お願いした専門家は、別の会計事務所でのNotion構築経験があったということでお願いしました。やはり実績は大事だと考えます。我々もお客様から選ばれる立場です。やはり実績があるということはとても大事ですね。

今回構築をお願いした専門家は以下の方々です。

法人向けNotionコンサルティングサービス「いとなみ」
https://ito-nami.net/

最後に

私たちは、時に「安すぎる」報酬で他事務所に負けることがあります。しかし、その他事務所は、その価格設定で本当に利益が出ているのでしょうか?スタッフの給与を上げることは可能でしょうか?

多くの税理士の先生方が、この疑問に向き合っていないと感じざるを得ません。

税理士の先生へ、あなたの「時給」を即座に答えられますか?

もし答えられないのであれば、システムを導入して、ご自身のビジネスを「見える化」してみませんか。税理士業界もマクドナルド並みの値上げを実現したいです!!!

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