海外子会社を通じた節税を防ぐ「タックスヘイブン税制(CFC税制)」。その適用を免れるための高いハードルが「経済活動基準(実体性テスト)」です。
この基準をクリアするには、子会社がその国で「実態のある事業」を行っていることを証明しなければなりませんが、その前提となる「その会社は、そもそも何の事業がメインなのか?」という判定が非常に重要になります。
今回は、この「主たる事業」の考え方と、判定の基準となる4つのステップについて解説します。
1. 経済活動基準の「4つのハードル」
海外子会社がペーパーカンパニーではなく、能動的な事業活動を行っていると認められるためには、以下の4つの基準すべてを満たす必要があります。
- 事業基準: 持ち株会社や資産運用が主目的ではないこと
- 実体基準: 現地に事務所、店舗、工場などの固定施設を有していること
- 管理支配基準: 現地で自ら事業の管理・運営を主体的に行っていること
- 非関連者基準 又は 所在地国基準: (業種によってどちらかが適用されます)
この4つをすべて満たせば、子会社の所得全体を合算されることは避けられ、特定の受動的所得(利子や配当など)のみが課税対象となります。
2. 「非関連者基準」と「所在地国基準」の使い分け
4つ目の基準は、その子会社の「主たる事業」が何かによって、適用されるルールが異なります。
| 区分 | 所在地国基準 | 非関連者基準 |
| 対象となる主な業種 | 製造業、小売業、銀行業、不動産業など | 卸売業、銀行業、信託業、保険業、航空機リース業など |
| 判定の内容 | 本店所在地国で主に事業を行っているか | 収入の50%超が「関連者以外」との取引か |
| 重視するポイント | 物理的な施設や拠点の場所 | 独立した第三者との取引実績 |
このように、事業の種類によって「場所」を重視されるのか、「誰と取引しているか」を重視されるのかが分かれるため、「どの業種として判定されるか」が運命の分かれ道となります。
3. 「主たる事業」はどう判断するのか?
海外子会社が1つの事業のみを行っている場合には、とてもシンプルです。しかしもし一つの子会社が複数の事業(例:製造と卸売)を行っている場合、どちらを「主たる事業」とするかは、単一の数字だけでなく以下の要素を総合的に勘案して判断することとされています。
- 収入金額 または 所得金額 の比率
- 従業員数 の比率
- 固定施設(店舗や工場など) の状況
この「総合判断」の重要性が浮き彫りになったのが、有名な「デンソー事件」です。
4. 裁判例から学ぶ:デンソー事件を題材として
「主たる事業」の判定が争点となった代表的な裁判例をご紹介します。この最高裁の判例により、主たる事業を判定されることとされています。
【デンソー事件の概要】
シンガポールの子会社が「地域統括業務(非関連者基準が適用される業種)」と「配当所得(事業基準に影響)」のどちらを主としているかが争われました。最終的に最高裁は、単なる収入金額の多寡だけでなく、人員の配置や活動実態を総合的に見て判断すべきとの見解を示しました。
以下に日経新聞の記事を引用させていただきます
海外子会社の所得にタックスヘイブン(租税回避地)対策税制を適用したのは違法としてデンソーが課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、同社が逆転勝訴した。最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は24日の判決で「子会社の業務に相当の規模と実体があった」と判断。名古屋国税局による約12億円の課税を認めた二審判決を破棄し、処分を取り消した。
対策税制は、税率が低い国・地域にある子会社の主な事業が「株式の保有」にとどまる場合、日本の親会社の所得に合算して課税する。子会社に経済活動の実体があるなど、一定の要件を満たせば適用されない。
今回の訴訟では、デンソーのシンガポール子会社に対策税制が適用されるかが争われた。
第3小法廷は判決理由で、子会社には東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の事業を効率化する目的があり、活動に経済合理性があったと指摘。「財務や物流改善などの業務は多岐にわたり、相当の規模と実体があった」と述べ、課税処分は違法と結論づけた。
判決はまた、対策税制で子会社の「主な事業」が何かを判断する基準について「事業活動の収入や所得、人数、店舗、工場などの状況を総合的に考慮するのが相当」との初判断を示した。
判決によると、シンガポール子会社は現地事務所があり、20人以上の従業員が地域統括業務を担当。税引き前利益の8~9割は株の配当が占める一方、地域の物流を改善する業務の売上額が収入の約85%に上った。
一審・名古屋地裁はデンソーの主張を認め、2009年3月期まで2年間の追徴課税処分を取り消した。二審・名古屋高裁は「子会社の主な事業は株の保有だ」と判断し、デンソーが敗訴した。
デンソーは「主張の正当性が認められた」とコメント。名古屋国税局は「裁判所の判断を謙虚に受け止め、今後も適正な課税に努める」とした。
10年の税制改正で地域統括業務を行う子会社については、主な事業が「株の保有」でも対策税制の適用除外となった。判決が同じようなケースで企業活動に与える影響は限定的とみられる。
デンソーは、今回とは別時期の約61億円の追徴課税処分の取り消しも求めている。名古屋高裁は10月18日の判決で国の主張を退け、デンソーが一審に続いて勝訴した。
子会社の「主な事業」 判断基準初めて示す
24日の最高裁判決は、租税回避地の子会社が課税対象となるかどうかを左右する「主な事業」の判断基準を初めて示した。筑波大の大野雅人教授(租税法)は「企業の海外進出が広がるなか、最高裁が基準を示したことは意義がある」と話す。
タックスヘイブン対策税制は1978年に導入された。日本企業が法人税率が低い租税回避地に利益を集めて法人税を圧縮するのを防ぐ制度だ。
課税対象の線引きで重視されるのは、子会社の活動に経済合理性があるかどうか。国内でも可能な事業をあえて低税率国で行えば、租税回避が目的と捉えられるからだ。
具体的には、子会社の「主な事業」が株式や債券の保有、船舶・航空機の貸し付けにとどまる場合などに課税対象となる。24日の最高裁判決は、事業活動の収入、従業員の人数などを踏まえて判断すべきだとした。
国税庁によると、対策税制の対象となる子会社などを持つ日本企業はこの10年間で7割強増え、2015事務年度で1613社に上る。
引用終わり
最後に
主な事業を総合的に判定するということですが、実務においては悩むことが多いと思います。実務家は事前に判定しなければなりませんが、国税は後出しじゃんけんです。また設立直後は収入の割合も毎年変化することもあるかもしれず、毎年悩むポイントだと思われます。
プロビタス税理士法人ではタックスヘイブン税制のサポートも行っております。以下の記事も併せてご参照ください。











