「アメリカの銀行でお金が引き出せない?日米相続で直面する『遺産管理人(Executor)』選任の壁と、日本の納税管理人の違い」

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【【プロベートの実務】の経験談】

「亡くなった父がアメリカに残した銀行口座を解約したい。日本の遺産分割協議書はあるのに、現地の銀行が認めてくれない……。」

そんなご相談をいただく際、必ずと言っていいほど直面するのが「米国の裁判所(プロベート裁判所)による代理人の選任」という高いハードルです。

日本の相続では、相続人全員の署名と実印があれば手続きが進むことが一般的です。しかし、アメリカでは多くの場合、裁判所から「Letter of Administration(遺産管理状)」を受け取った正式な代理人(遺産管理人)でなければ、1ドルの送金すら指示することができません。

今回、私が米国の会計士や弁護士と進めた実務でも、日米の制度のズレを埋める作業が不可欠でした。

  • 米国の「遺産管理人(Executor)」:裁判所の監督下で、全ての資産を管理・清算する強力な権限を持つ。米国の市民でなければなりません。
  • 日本の「納税管理人」:海外居住者の代わりに、日本での税金の申告・納付を担う。

この二つは、名前は似ていても役割が全く異なります。本記事では、米国の裁判所から「代理人を選定しなさい」と言われた際、日本の相続人がまず何をすべきか、実務の現場から具体的に解説します。

ステップ解説編

「アメリカの裁判所に提出する『サイン』には、特別な手続きが必要」

米国の裁判所から代理人に選任されるためには、多くの書類に署名(サイン)をしなければなりません。しかし、単にサインをして郵送するだけでは、裁判所は受理してくれません。「そのサインが本当に本人のものか」を証明するプロセスがセットで求められるからです。

実務上、特に重要になるのが以下の3つのステップです。

1. 日本の「印鑑証明」は翻訳しても使えない

日本では役所が発行する「印鑑証明書」が最強の本人確認書類ですが、アメリカのプロベート裁判所では通用しません。彼らが求めるのは、公的な権限を持つ人の目の前でサインをし、その場で認証を受ける「公証(Notarization)」です。

2. 公証役場での「サイン証明」とアポスティーユ

日本の居住者がこの「公証」を得るには、主に以下の2つの方法があります。

  • アメリカ大使館・領事館での公証(Notarize):予約が取りにくく、ハードルが高いのが難点です。
  • 日本の公証役場での宣誓供述(Affidavit):公証人の前で「この内容は真実です」と宣誓し、サインをします。さらに、その公証人が本物であることを外務省が証明する「アポスティーユ」が必要になるケースがほとんどです。

3. 国際郵便(DHL/FedEx)のデッドライン

現地の専門家は、裁判所の期日に合わせて動いています。 「明日までにサイン済みの原本をPDFで送ってくれ、原本は週明けに必着だ」 といったタイトなスケジュールが日常茶飯事です。ここでは、単なる税務の知識だけでなく、国際物流のスピード感も含めたハンドリングが求められます。

4. 決定の手順

・まずは米国の弁護士の選定

・次に遺産管理人(Executor)の選任

・その弁護士がアメリカの裁判所に遺産管理人(Executor)を申し立て

・その申し立ての際に、サイン証明の原本などが必要になります

※プロベートと言うのはなじみのない英単語ですが、”検認”と言うのが適切のようです。

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