2024年12月に急逝した女優・中山美穂さん。私が学生の時のアイドルでした。まさに私の青春で、急逝のニュースは本当にショックでした。
2026年4月、パリ在住の息子さんが遺産の相続を放棄したというニュースが世間の注目を集めました。その真偽はわかりませんが、「なぜフランスに住んでいるのに日本の相続税がかかるの?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、中山美穂さんのケースを題材に、国際相続における相続税の仕組みをわかりやすく解説します。
「海外在住だから日本の相続税は関係ない」は大きな誤解
まず大前提として、日本の相続税は「被相続人(亡くなった方)が日本に住んでいたかどうか」を第一の判断基準とします。財産が日本国内にある場合は、外国に住んでいる人であっても国籍に関係なく日本国内で相続税の納税が必要です。
そして、被相続人が日本人で相続開始日に日本在住の場合には、相続人が何十年と海外在住であっても、外国人と結婚して外国籍になったとしても、相続人の状況は一切関係なく無制限納税義務者となります。
つまり、子どもが何年フランスに住んでいても、親が日本で亡くなった以上、その子どもは「無制限納税義務者」として、日本国内の財産だけでなく全世界の財産に対して日本の相続税が課される可能性があるのです。
納税義務は4種類に区分される
日本の相続税には「誰にどこまで課税するか」を決めるための区分があります。大きく分けると以下の通りです。
無制限納税義務者(国内・国外すべての財産が課税対象)
- 居住無制限納税義務者:相続開始時に日本に住所がある
- 非居住無制限納税義務者:海外在住だが、被相続人か相続人の一方が日本に住所を持っていた
制限納税義務者(日本国内の財産のみ課税)
- 被相続人と相続人の両方が、過去10年以上にわたって日本に住所を持っていなかった場合に該当
制限納税義務者になるためのハードルは極めて高いものになっています。以前は日本を離れて5年というルールだったものが平成29年の改正により10年ルールになったため、さらにハードルが高くなっています。
中山美穂さんのケースを当てはめると
上のフロー図をご覧ください。中山美穂さんのケースを当てはめると、次のように整理できます。
- 被相続人(中山美穂さん):日本国内に住所あり・日本国籍
- 相続人(パリ在住の息子さん):海外在住
被相続人が日本人で日本在住の場合は、相続人の日本国籍の有無や居住地を問わず、すべての相続人が無制限納税義務者になります。

つまり、息子さんがパリに住んでいるという事実は、この判定において関係がありません。お母様が日本に住んでいた以上、息子さんは無制限納税義務者として、日本国内外のすべての財産に対して日本の相続税を負担する義務が生じます。
さらに複雑な「二重課税」の問題
海外在住の相続人が日本の相続税を払うだけで終わりかというと、そうではありません。フランスに住んでいる息子さんが日本で相続をすると、日本の相続税だけじゃなくて、フランス側の税制の影響も受ける可能性があります。
日仏間の租税条約により外国税額控除が適用されるケースもありますが、申告手続きは非常に複雑になります。
相続税の計算と申告期限
仮に遺産が5億円規模だとした場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」なので、相続人1人なら3,600万円です。5億円から3,600万円を引いた約4億6,400万円が課税遺産総額となり、累進税率をかけると相続税の概算は1億5,000万円を超えてきます。
また、相続税の申告と納付の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。この期限は原則として延長は認められず、納付は原則「現金一括」です。
海外在住の相続人にとって、書類の収集・翻訳・大使館でのサイン証明の取得など、この10ヶ月という期限は非常にタイトです。
相続放棄をした場合、遺産はどうなる?
中山美穂さんの場合、相続人である長男が相続放棄したとすると、母親がすべて相続することになります。
相続放棄の手続き自体は、海外在住者でも日本の家庭裁判所に対して行う必要があり、民法上は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内 に申述しなければなりません。
今回のポイントまとめ
国際相続において特に重要なポイントを整理します。
- 被相続人が日本在住なら、相続人が海外に何年住んでいても日本の相続税がかかる
- 「無制限納税義務者」に該当すれば、日本国外の財産にも課税される
- 制限納税義務者になるには、被相続人・相続人ともに10年以上海外に住む必要がある
- 二重課税のリスクもあり、国際相続は非常に複雑
- 申告期限は10ヶ月・現金一括が原則で、海外在住者には特に注意が必要
まとめ:国際相続は早めの専門家相談を
中山美穂さんのケースは、グローバル化が進む現代において他人事ではありません。子どもが海外留学・移住している、配偶者が外国籍であるなど、国際的な要素が絡む家庭は年々増えています。
相続が発生してから動き始めると、期限が非常にタイトになります。とりわけ国際相続は、住所・国籍・居住歴・租税条約と、判断すべき要素が多岐にわたります。「まだ先の話」と思わず、国際相続に詳しい税理士や弁護士に早めに相談されることを強くお勧めします。
本記事は一般的な税務の解説を目的としており、個別の税務判断を行うものではありません。具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。






