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国際税務に関する税務調査の対応方法

目次

日本の親会社が税務調査の対象となったら(法人税編)

日本の場合には、3年ごとなどの一定の周期で税務調査を受けることが多いと思います。大企業については、この周期が短いケースもありますが、逆に税務の状況が良好な大企業については、税務調査の間隔をあける取り組みがされているとも聞いています。

資本金が1億円超の大企業については国税局が、資本金が1億円以下の中小企業については所轄の税務署が税務調査を担当することが多いです。資本金が1億円以下の中小企業なのに、国税局による調査が行われることもあります。それはあらかじめ何らかの税務上の問題を把握されていることが多い印象です。

なお法人税の税務調査においては、海外取引は必ず対象となりますし、最近は海外取引が重点的に調査される傾向が強いと思います。特に海外に子会社を有する企業はその傾向が顕著です。

海外取引についての指摘事項(法人税)・・・寄付金

税務署レベルの職員であれば、海外取引を見た瞬間に”寄付金と認定できないか?”と考える、と思ってください。特に税務署職員はその一点張りであることが多いです。海外子会社との取引を見た時点で、寄付金を探していると思って間違いがありません。

海外子会社の再建支援のために債権放棄を行う場合、その損失に合理性があるなどの一定の場合を除いて、その日本親会社が負担する子会社の損失は、その全額が損金不算入となります(国外関連者に対する寄付金)。

ただ難しいのは、そのような債権放棄などわかりやすいイベントでなくて、支援の意図がなくても、海外子会社に寄付を行っていると指摘されることがあります。たとえば、日本親会社が海外子会社から適正な対価を回収していない場合に寄付金と言われます。

経験としてあるのが、海外に子会社を設立し、サポートのために日本親会社の職員が出張した場合の、その給与と出張旅費相当額を寄付金として指摘されるケースです。

親会社による技術指導などであれば、基本的には海外子会社が負担すべきものなので、日本親会社は、海外子会社から役務提供の対価を回収する必要があるということです。

そのような指摘を回避するためには、あらかじめ日本親会社が海外子会社に業務委託している内容を確認して、その対価をキチンを得ていることを把握する必要があります。仮に税務調査で指摘されてしまったら、その出張などが対価を回収すべきものなのかについて税務当局に説明をしていくことが必要になります。

海外取引についての指摘事項(法人税)・・・タックスヘイブン税制

海外子会社を保有している場合にいきなり税務調査の連絡があることがあります。

“その国に所在する子会社はタックスヘイブンの対象ではありませんか?”

トランプ大統領時代のアメリカに子会社を持っている日本親会社に対して、連続的に複数の税務調査が行われた経験が我々もあります。トランプ大統領時代は大幅な法人税減税を行っていたので、意図せずアメリカ子会社が日本のタックスヘイブン税制の対象になることも多かったです。

法人税申告書別表17(4)で海外子会社の状況は把握できるので、そのデータから調査対象を絞り込んでいたのではないかと推測します。

ちなみにタックスヘイブン税制が適用されるのは、ペーパーカンパニーなど一定の例外を除けば、法人税率が20%未満の国に所在して、日本の会社などに10%以上保有する場合などです。ただしその20%というのは、各国の法定税率ではなく、その海外子会社の租税負担割合と呼ばれる指標です。

法定の実効税率は20%以上であったとしても、現地の優遇税制などを受けた結果、税負担が減少した場合、実質的な税率は20%未満になることもあり得ます。

そのような会社もタックスヘイブン税制の対象になります。海外子会社を保有している場合、タックスヘイブン税制の判定をするのは義務です。

日本親会社に税務調査が来たら(源泉所得税編)

日本の税務調査においては法人税や消費税の調査のみならず、源泉所得税の調査もあります。

海外への支払いの際には、源泉所得税の徴収漏れがないかを常にチェックしておく必要があります。

  • 使用料(ロイヤルティ)の支払い
  • 出向者
  • 家賃
  • システム開発費用

などなど。海外の支払いの際には、源泉所得税が必要かどうかの観点は常に必要です。

なお租税条約の届出書の提出により、源泉所得税が免税となることも多いので、租税条約の届出書についても検討が必要です。

なお注意点で、税務調査官も理解していない時がありますが、それは海外にある駐在員事務所の場合です。海外にある駐在員事務所は、あくまで日本親会社の一部になります。

海外にある駐在員事務所で発生する経費のすべては、日本親会社で計上して問題ありません。ただし注意点としてその支払の中に源泉徴収が必要なものが含まれていないかというのがあります。

海外の口座から海外の業者に支払われるので気づきにくいですが、税法上は日本から海外に支払っていることになるので、源泉徴収が必要となることがありますし、場合によっては租税条約の届出書の提出の検討が必要です。

海外子会社の決算書の提出を日本の税務当局に求められたら

個人的には海外の子会社の決算書は日本の税務調査において提出しなければならない義務があるとは思いません。

別表17(4)にて決算の概要は記載しなければならず、時によっては提出はやむを得ない場合もあると考えます。

その場合、税務調査において確認されるのは以下の観点です。

  • 海外子会社の損益が継続的に黒字か
  • 日本の親会社の利益率と海外子会社の利益率の比較
  • 海外子会社にて大きな支出がないか?(誰に対する支払か?)

日本親会社の利益を、低課税国にある海外子会社に付け替えているのではないか、ということが疑われます。

利益率に違いがあるのであれば、その理由を説明できることが大事です。

その違いについて、解消される見込みがあるのか、そして一過性のもなのかどうか、などについて丁寧に説明することが求められます。

なおこれは移転価格税制の観点からの調査になります。移転価格税制というのは超大企業だけが対象にあるイメージですが、最近は中小企業でもそのような観点の調査が行われるようになってきたという印象です。

日本親会社と海外子会社において利益率に大きな違いがあるのであれば、その違いを合理的に説明できるようになっておきたいものですね。

海外取引について税務調査の対応が必要でしたら、税務調査の経験が豊富なプロビタス税理士法人にお気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。