海外口座は税務署に「筒抜け」?調査官の言葉に驚愕した実話と、国税庁の調査能力を徹底解説

ところでXXさんは、アメリカと中国に銀行口座を持っていますよね?そのステートメント(取引明細)を見せていただけますか?

2025年、とある個人の税務調査に立ち会っていた際、調査官から飛び出したこの一言に、私は内心「なんで、そこまで知っているのか?」と驚愕しました。

対象の方は、決して超富裕層というわけではありません。特に中国の口座は20年前に開設したきり、ここ10年は送金実績もなく、残高も100万円以下。本人ですら忘れかけていたような口座の情報が、なぜ日本の税務署に把握されていたのでしょうか。

国税当局がどのようなルートで「国外財産」を把握しているのか、その恐るべき実態と2026年からの最新動向を解説します。


目次

1. 5,000万円超の財産があるなら必須「国外財産調書」

まず、最も基本的な把握ルートが「国外財産調書」です。

  • 対象者: その年の12月31日時点で、合計5,000万円を超える国外財産を持つ居住者(非永住者を除く)。
  • 義務: 翌年6月30日までに、その年12月31日時点の財産の種類・数量・価格を記載して税務署へ提出。
  • 罰則: 虚偽の記載や不提出には罰則(加算税の重課や、悪質な場合は懲役・罰金)が科されます。

この自己申告制度が、当局にとって第一の大きな情報源となります。

情報交換の仕組み3つ

各国の税務当局は租税条約等に基づき、情報交換の仕組みを構築し、国際的な脱税や租税回避に対応しています。具体的には以下の情報交換の形式があります。

  1. 要請に基づく情報交換: 個別の税務調査で疑わしい点がある場合、相手国にピンポイントで照会する。
  2. 自発的情報交換: 外国の課税当局が「日本に関連する脱税の疑い」を見つけた際、自発的に通報してくれる。
  3. 自動的情報交換: CRSのように、一定の情報を定期的に一括交換する。

なお日本は、2025年12月1日現在、89の租税条約等が157の国・地域に適用されています。実質的にはほぼ世界中すべての国・地域と条約を締結しており、情報を入手できる環境が用意されていると考えてよいでしょうか。


2. 逃げ場をなくす国際基準「CRS(共通報告基準)」

冒頭の事例のように、少額の口座まで筒抜けになっている最大の理由は、共通報告基準「CRS(Common Reporting Standard)」にあります。上で言うと自動的情報交換がこれに該当します。これは、各国の税務当局が銀行口座情報を「自動的に交換」する国際的な仕組みです。

報告される情報の具体的内容

CRSを通じて、相手国の税務当局から日本の国税庁へ、以下の情報が定期的に自動で送られてきます。

項目内容
対象金融機関銀行、証券会社、生命保険会社、投資事業体(信託等)
対象口座預金口座、証券口座、保険契約、信託の投資持分
提供される情報氏名・住所、納税者番号、口座残高、利子・配当の受取総額

今回の税務調査の経験で言うと、日本の税務署は「どの国に口座があるか」という名寄せは完璧に行っていました。残高についても、1円単位で把握しているか、あるいは調査の過程で「カマをかけている」のかは不明でした。ただ海外に銀行口座を有していることを隠し通すことは不可能に近いと言えるでしょう。


3. 【2026年最新】暗号資産(仮想通貨)も対象へ

さらに注意が必要なのが、2026年からの法改正です。これまでは報告対象外だった資金移動業者や暗号資産(デジタルマネー)関連の口座も、CRSの報告対象に加わります。

「海外の取引所で暗号資産を持っているから大丈夫」という考えは、もう通用しません。デジタル資産も、今後は日本の国税庁によってリアルタイムに近い形で把握されることになります。


4. 現場で「こくそー」と呼ばれる最強の武器「国外送金等調書」

税務調査の現場で、調査官がよく口にする専門用語に「こくそー(国送)」があります。これは「国外送金等調書」のことです。

  • 100万円を超える海外送金・受金が行われると、日本の金融機関から税務署へ自動的にレポートが飛びます。
  • 送金目的や相手国、氏名、住所が記録されるため、ここから「海外に資産があるのではないか?」と疑いの目が向けられるケースが非常に多いのです。

※海外送金に関する詳細は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

[海外送金で税務署からお尋ねが届く基準とは?

https://probitas.jp/kokusaizeimu/kojinmuke/kaigaisoukin-2/



まとめ:海外財産は「筒抜け」という前提で対策を

「国外財産調書」「CRS」「国外送金等調書」――。これら3つの網を組み合わせることで、課税当局は納税者の国外財産の全容を解明しようとしています。

私の経験から申し上げられるのは、「海外にある財産も、日本の国税庁には筒抜けである」という前提で、正しく申告・納税を行うのが、結局は最も賢い選択であるということです。

意図せぬ申告漏れや、過去の海外口座について不安がある方は、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。あわせてこちらもご確認ください。

あわせて読みたい
【実録】税務調査の連絡がきた!RSU/SOが無申告だった!どうしよう!? ひそかに「確定申告をしなければならない」と思いつつ、忙しくて今まで何もしてこなかった外資系企業勤務の方に、税務調査の連絡が。 税務署はずっとあなたを見ていて、...
あわせて読みたい
(税務調査の連絡が来たら)外資系企業向け税務調査のポイント 国際税務に詳しい税理士が、外資系企業の税務調査について解説します。外資系企業は税務調査が入られやすいのか?どういうところを見られるのかなど解説しています。 国...

関連記事

目次