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富裕層に人気の美術品投資と確定申告

年間の個人の確定申告実績100件超。富裕層もクライアントに持つプロビタス税理士法人が、富裕層に人気の美術品投資に係る確定申告を徹底解説します。
目次

いま富裕層に人気の美術品(アート)投資。100万円で購入した絵画が1年後に何倍になることも…

最近は富裕層の方を担当していると美術品の扱いを聞かれることが多くなりました。

弊社でも担当させていただくことがあって、でも税金に関する情報が多くありませんので、以下にまとめました。(なおNFTによるデジタルアートは対象としておりません)

購入したときに係る税金

購入時には特に税金は発生しません。ただし決めておかなければいけないことがあります。

趣味として購入したのか、事業用として購入したのかということです。

美術品を「事業用として購入する」というのは、たとえば仕事場に購入した絵画を飾ることを想定しています。

購入後、売却するまで

趣味として購入したのであれば、何もする必要はありません。

事業用として購入した場合には、2つのことを考える必要があります。

①減価償却

取得価格1点100万円未満の美術品は減価償却の対象になります(平成27年以降)。8年もしくは15年の耐用年数で減価償却してきます。

個人事業主であれば、事業所得の経費になるでしょう。

なお注意点ですが、取得価格と購入価格は違います。取得価格というのは”取得のために要した費用”ですので、購入価格に輸送費などを加えて金額で判断します。

購入価格が98万円で輸送費が3万円であった場合、取得価格は101万円になりますので、減価償却の対象にはならないです。

また事業所得の必要経費としては、減価償却に加えて、保険料や保管費用も認められるのではないかと考えます。節税という観点では大事なところですので、慎重に判断したい点です。

②減価償却の特例

取得価格1点10万円未満の美術品は、全額経費にできます。

取得価格1点10万円以上30万円未満の美術品については、複数の取り扱いが考えられます。詳しくは税務署や税理士にご確認ください。

③償却資産税

減価償却の対象となる資産については、償却資産税の申告が必要になります。

毎年1月末までに、その前年の償却資産税の状況について、各自治体に申告をする必要があります。

税率は調整された償却後簿価の1.7%程度ですが、わかりにくいので、大まかには購入価格の1%のイメージでも良いでしょう。

売却

個人事業主が美術品を売却する場合には、総合課税の譲渡所得として申告が必要になります。

所有期間が5年以下と5年超で税率が異なります。5年以下の場合には短期譲渡所得となり、5年超の場合には長期譲渡所得となります。

注意点としては、売却額に税率をかけるのではなく、売却益(キャピタルゲイン)に対して税率を乗じるということです。

税率は総合課税ですので、5-45%の超過累進税率(住民税も含めると15-55%)ですが、長期譲渡所得は売却益(キャピタルゲイン)の1/2に対して税率を乗じます。

売却益は以下の計算式で計算します。

売却益(キャピタルゲイン) = 売却額 - 取得費(減価償却をしていたのであれば考慮後の額)

売却を申告しなくても良い場合 (売却額が少額であった場合)

すべての美術品の売却を申告しなければならないわけではありません。

「生活に通常必要な資産」という考え方があって、貴金属や宝石、書画、骨董品などで、1個又は1組の価格が30万円以下のものが該当します。

つまり美術品で売却額が30万円以下のものは「生活に通常必要な資産」になります。

「生活に通常必要な資産」の売却益は非課税とされています。

したがって、申告をする必要はありません。ただ非課税ですので、利益が出た場合はラッキーですが、損失があった場合においても、その損失は無視しなければなりません。

売却 申告が必要な場合

逆に「生活に通常必要でない資産」は貴金属や宝石、書画、骨董品などで、1個又は1組の価格が30万円超のものを言います。

売却額が30万円超の美術品は、確定申告が必要となります。ただ1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の場合はこの限りではありません。

売却益(キャピタルゲイン)が出た場合には確定申告をするのですが、売却損(キャピタルロス)が出た場合にはどうなるのでしょうか?

例えば美術品Aの売却益(キャピタルゲイン)が500万円で、美術品Bの売却損(キャピタルロス)が100万円であった場合、その年の譲渡所得は400万円になります。

もし美術品Aの売却益(キャピタルゲイン)が100万円で、美術品Bの売却損(キャピタルロス)が500万円であった場合、その年の譲渡所得はマイナス400万円になります。同じ年中の売却益とは相殺できますが、その結果に残ったその売却損(マイナス400万)は、残念ながら他の所得と損益通算できません。

消費税について

趣味で売買している限りにおいては、消費税の課税要件(事業として行っていること)を満たさず、消費税の課税はないものと考えます。

ただし独立・反復・継続して行われている場合には、消費税の課税取引になる可能性もある余地があると考えます。

法人で売買する場合

富裕層の方の中には資産管理会社を作って、その法人にて美術品を売買することもあると聞いています。

この場合には、個人とは全く取り扱いが異なります。法人の場合には趣味で売買するという考え方はなく(そんなことをしたら横領になってしまいます)、すべて事業として売買を行っていると考えます。

したがって、消費税の対象取引ですし、100万円以下の美術品に関して減価償却は必須ですし、売却額1円でも非課税ではなく確定申告が必要です。

美術品(貴金属や宝石、書画、骨董品など)の税金計算は特殊であり、また取引金額も高額ですので、税務処理には神経を使います。

最近は富裕層の方を担当していると美術品の扱いを聞かれることが多くなりました。弊社では美術品の税務上の処理に関する経験が多いですので、もし税務に関してご依頼いただけそうであれば、お気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。