はじめに
こんにちは、この記事は2021年11月に記載しています(2024年4月に追記)。2021年11月7日の早朝、衝撃的なニュースを目にしました。
- ラブズオンリーユー ブリーダーズカップ・フィリー&メアターフ制覇
- マルシュロレーヌ ブリーダーズカップ・ディスタフ制覇
昔ながらの競馬野郎の私にとって、日本調教馬がブリーダーズカップを制覇するなんて、ダビスタでさえ無理ゲーな世界。野球で例えれば、大谷翔平がメジャーリーグでMVPをとるようなもの。競馬の世界でそんなことが実現するなんて信じられませんでした。と同時にその2頭に共通することに思いが至りました。
なお競馬好きとしては馬券に係る税務も大事です。詳細は以下をご参照ください。
両方ともクラブ所有の競走馬ではないか…
ラブズオンリーユーはDMMバヌーシ、マルシュロレーヌはキャロットクラブというクラブ所有馬です。
日本中央競馬会における個人馬主の条件
- 過去2ヵ年の所得金額と、今後も継続的に得られる所得金額見込みがいずれも1,700万円以上あること
- 継続的に保有する資産の額が7,500万円以上あること
なお地方競馬であれば、直近年の所得金額が500万円以上であることであり、かなり敷居は下がります。地方競馬なら無理ではないかもですが、でもそもそも素人が良い競走馬を購入できないですよね。毎月発生する委託料もバカになりません。
JRAの馬主になるなんて、しがない税理士の私にとっては夢のまた夢。でも一口馬主であれば、自分の保有競走馬が海外の名だたるG1レースを制することも夢ではないのではないか?
そんなことをふと思いついたのです。
そこで早速問い合わせをしてみたのでした。そこで気になるのが、一口馬主の税務。
“はじめに”が長くなりすぎましたが、一口馬主の税務を簡単に解説いたします。なお今回は、個人として出資する前提です。
一口馬主とは
一口馬主は、1頭の競走馬を40~500口程度に分割して出資を募集する制度です。一口馬主は、所属するクラブと呼ばれる法人の募集馬を選択して一口単位で出資を行い、さらにえさ代や預託代などの維持費を毎月口数に応じて負担します。
一口馬主は、レースで獲得した賞金の約60~80パーセントに加え、出走手当などを口数に応じた収益を受け取ることができます。
一口馬主にかかる実際の費用<DMMで確認>
金銭面でハードルの低い一口馬主ですが、出資金やクラブへの入会金など、様々な費用が掛かります。
- クラブ入会金…1~3万円が相場。
- 出資金…募集総額を募集口数で割った金額。一口あたりの金額は募集馬によって異なる。一口あたりの金額×出資口数が出資金となる。
- クラブ月会費…クラブに毎月支払う会費。
- 維持費出資金…育成費や厩舎(きゅうしゃ)預託料、医療費などの出資馬の飼育管理費用に相当するもの。50~80万円程度が口数に応じて分割請求される。毎月支払うクラブもあれば、初回金としてまとめて支払うクラブもある。毎月支払う場合、相場は一口1,200~2,000円程度。
- 保険料出資金…競走馬の生命保険金。2歳以降に必要となる。馬の年齢や価格によって異なるが、保険料率は募集価格の3パーセント前後であることが多い。年に1回支払う。
DMMバヌーシの場合は以下の通りでした。
- 維持費出資金(育成・厩舎費等)月々 300円
- 会費(税込)月々 825円
- 維持費出資金(保険料)年に1回 1,500円
年間で2万円弱という感じでしょうか
個人で出資する場合の確定申告
一口馬主に出資するというのは、DMMバヌーシなどが組成した匿名組合に出資するということです。匿名組合に出資した場合には、所得区分は雑所得になります。
なおクラブチームは支払調書という書類を税務署に提出をします。支払調書というのは、各出資者(一口馬主)の1年間の収支をまとめたものです。したがって、税務署は一口馬主の収支状況はすべて把握している前提です。したがって、一口馬主の収支状況は、税務署にバレていると考えて良いでしょう。
個人で出資する場合の確定申告 消費税
一口馬主の場合には、その競走馬ごとに匿名組合を組成することになると思います(DMMやシルクレーシングはそのようです)。税務上は匿名組合の分配金になりますので、その場合には消費税は不課税となります。詳細はクラブの方に確認をしてください。
節税になるか?
雑所得の場合、損をしてもその損失は他の所得と損益通算できません。出走できず、また出走しても未勝利のまま引退する馬も多いです。そのような場合、出資したものも戻ってこないで損をすることになります。
サラリーマンの方が一口馬主になることもあるかと思いますが、そのような場合に損をしたとしても、給与所得にかかった税金に対しては損益通算できず節税にはならないということですね。
ただ仮想通貨による所得など、他の雑所得との損益通算は可能です。
源泉徴収
分配金に対して、20.42%の源泉徴収がされます。
クラブチームのサイトなどを見ていると、雑所得が20万円未満であれば確定申告の義務はありません、と書いてあります。ウソではありませんが、確定申告をすれば、源泉徴収された税金が還付されるケースがほとんどだと思います。
私であれば20万未満であるかどうかにかかわらず、絶対に確定申告します。
雑所得の計算方法
収入金額から必要経費を控除したものになります。控除してマイナスになった場合にはゼロとします。
収入金額
毎月お送りしている出資と分配に記載されている利益分配額を一年間合計した数字になります。毎月お支払する分配金は出資返戻金と利益分配額を合わせた金額となりますので、
受け取り分配総額と収入金額は必ずしも一致しません。
必要経費
一般会費、入会金、終了損失の合計額となります。維持費は追加出資金にあたるため、費用とはなりません。
以上はキャロットクラブのホームページからの抜粋です。クラブチームによって多少の差異はあるのかもしれませんが、参考になります。参考:https://carrotclub.net/pdf/kinyurei2015.pdf
2023年の結果
ミスティックロアの2023年中の競争成績です(2023年2月で新馬デビューしました)。
合計5戦2勝2着2回着外1階
1勝するのも大変な中で、2勝を挙げて、2勝クラスに属しているというのは、かなり優秀。我ながらにアロゲート産駒に注目したのは流石。
2023年中の総獲得賞金は2330万円。その結果はどうなるのでしょうか?
結果、赤字!!!
DMMバヌーシサイトからの引用です。賞金等を分配する際に、「出資返戻金」を算出し、当該金額を上回る金額が「利益分配額」となります。つまり馬の購入金額を超える賞金を稼がない限りは黒字にならないということですね。
ちなみに出資金額総額は7500万円。獲得賞金2330万円程度では、黒字にならないということですね。ちなみに2024年4月時点で、2勝クラス、3勝クラスを連勝し、総獲得賞金が7280万円。さすが世界の矢作きゅう舎。ここからようやく利益になるかもしれません。
でも、馬の購入代金が7500万円であれば、オープンクラスにならないと黒字にならないということですね。(なお一口馬主の分配金は匿名組合経由ですので、消費税は不課税です)
最後に
一口馬主への出資は節税にはつながらないことがほとんどです。
一口馬主の税務区分は雑所得。上で書いた通り、最初はまず赤字です。でも雑所得の損失は繰り越すことができません。ミスティックロアみたいに晩成で、初年度は赤字で翌年以降に黒字になったとしても、前年以前の赤字と相殺できないのです。これはかなり変な制度です。税務上は本当にメリットがありません。
でももしかしたら自分が出資した馬がブリーダーズカップに出たら、凱旋門賞に出走したら、アーモンドアイのような馬だったら…、考えるだけでも楽しくなります。
そんなわけはないのですが、その楽しみのために無理ない範囲で出資するのが良いのだろうと思ってます。
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