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- 顧問税理士が国際税務に詳しくない
- 税理士が英語対応してくれない
- 会計事務所に質問しても、すぐに答えが来ない
はじめに
プロビタス税理士法人では、外資系企業のお客様の税務を多く担当させていただいております。外資系企業には、普通の日本の会社にはない論点がいろいろとあります。その一つが移転価格です。外資系企業は必ず海外との取引が発生しますので、移転価格については常に意識しなければなりません。
そして平成28年(2016年)の税制改正によって、移転価格の文書化が強化されました。仮に日本国内では規模の小さい外資系企業であったとしても、親会社が海外の上場企業ということはよくあります。
そのような外資系企業は、仮に従業員が一人だけというような規模であったとしても、移転価格の文書化は意識しなければなりません。
提出しなければならない書類は多岐にわたります。以下に必要な書類について解説いたします。
最終親会社等届出事項
特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人又は恒久的施設を有する外国法人は、最終親会社等及び代理親会社等に関する情報を記載した最終親会社等届出事項を、報告対象となる会計年度の終了の日までに、e-Tax により、所轄税務署長に提供する必要があります。(租税特別措置法第 66 条の4の4第5項)
簡単に言うと、資本関係的に一番上の親会社はどこのだれか?ということですね。
提出期限は、最終親会計年度終了の日までになります。
ただし直前の最終親会計年度の連結総収入金額が1,000億円未満の多国籍企業グループであれば、日本国内において提出義務は免除されます。
最終親会社の会計年度の連結ベースの売上高が1000億を超えるかどうかというのが確認すべきポイントになります。
国別報告事項(CbC レポート)
特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人(最終親会社等又は代理親会社等に該当するものに限ります。)は、国別報告事項を、報告対象となる会計年度の終了の日の翌日から1年以内に、e-Tax により、所轄税務署長に提供する必要があります。(租税特別措置法第 66 条の4の4第1項)
提出期限は最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内となっています。上記の最終親会社等届出事項の1年後ということになります。
直前の最終親会計年度の連結総収入金額が1,000億円未満の多国籍企業グループであれば、日本国内において提出義務は免除されます。最終親会社の会計年度の連結ベースの売上高が1000億を超えるかどうかというのが確認すべきポイントになります。これは上記の最終親会社等届出事項とほぼ同じになりますね。
ただ最終親会社等届出事項との違いとしては未提出の場合には罰則があるということです。正当な理由がなく国別報告事項を期限内に税務署長に提供しなかった場合には、30 万円以下の罰金となっています。(措法第 66 条の4の4第7項)
いままで罰則を受けた例は見たことがないですが、注意したいポイントです。
事業概況報告事項(マスターファイル)
特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人又は恒久的施設を有する外国法人は、事業概況報告事項を、報告対象となる会計年度の終了の日の翌日から1年以内に、e-Tax により、所轄税務署長に提供する必要があります。(措法第 66条の4の5第1項)
提出期限は最終親会計年度終了の日の翌日から1年以内となっています。上記のcbcレポートと同じになります。
直前の最終親会計年度の連結総収入金額が1,000億円未満の多国籍企業グループであれば、日本国内において提出義務は免除されます。
最終親会社の会計年度の連結ベースの売上高が1000億を超えるかどうかというのが確認すべきポイントになります。これは上記の最終親会社等届出事項とほぼ同じになりますね。
ただcbcレポートと同じく、未提出の場合には罰則があります。正当な理由がなく事業概況報告事項(マスターファイル)を期限内に税務署長に提供しなかった場合には、30 万円以下の罰金となっています。(措法第 66 条の4の5第3項)
いままで罰則を受けた例は見たことがないですが、注意したいポイントです。
独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)
国外関連取引を行った法人は、当該国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類を確定申告書の提出期限までに作成又は取得し、保存する必要があります。(措法第 66 条の4第6項)
作成義務者は国外関連者(グループ会社)と取引を行った日本の法人です。作成期限は 確定申告書の提出期限になります。
保存期間・保存場所等は、原則として、確定申告書の提出期限の翌日から7年間、国外関連取引を行った法人の国内事務所で保存(措規第 22 条の 10 第2項)とされています。提出の義務はありません。
ただ次の場合には、当該事業年度の一の国外関連者との国外関連取引について、同時文書化義務を免除されます。
同時文書化義務が免除される場合
① 当該一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の取引金額(受払合計)が 50 億円未満、かつ
② 当該一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の無形資産取引金額(受払合計)が3億円未満である場合
すごく大きな外資系企業であれば、上記の要件を満たすのでしょうが、従業員数名の外資系企業であればほぼ要件は満たさないのではないかと思います。
提出期限は、税務調査において提示又は提出を求めた日から一定の期日とされています。つまり税務調査が入ることが明らかになった場合には提出する義務があります。ただ税務調査の連額があってから作成しても間に合わないと思います。(経験上、ローカルファイルの作成は最低でも3か月ほどかかっています)したがって、あらかじめ作成しておくことを強くお勧めいたします。
※ 一定の期日までに提示又は提出がない場合、推定課税及び同種の事業を営む者に対して質問検査を行うことができることとされています。
最後に
2016年の税制改正事項なので、まだなじみのない方も多いかもしれません。ただこの税制改正は、BEPS(「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字による略語。日本語では「税源浸食と利益移転」)防止のための国際的なプロジェクトの一環であり、先進国で同時に導入されている事項のようです。
親会社の経理担当者に連絡したら、多くの場合、”あぁ日本も必要なのね”というくらいの感じで対応してくれることが多いです。したがってイチから説明するということはありませんし、親会社も協力的である印象です。
外資系企業であればきちんと提出されているかを確認しておきたい事項ですね。もし外資系企業の税務について疑問に思われるようなことがあれば、お気軽にお問い合わせください。
ご覧になっていただきありがとうございました。
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