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フリーランスが海外からリモートで日本企業の仕事をした場合(人的役務提供の対価)

最近、海外に住みながら、日本企業で働く場合があります。特に個人事業主(フリーランス)の場合、税金の扱いに悩みます。国際税務に詳しい税理士が、国外からリモートでフリーランスで働く場合の税金について解説します。
目次

質問

日本国外に居住しているフリーランスの方が、日本国内のクラウドソーシングサイトを通じて、役務提供(翻訳の仕事など)をしました。この場合日本で税金を支払う必要はありますか?

ちなみに…

役務提供の中には著作権の使用料金は含まれていません。かつ、このフリーランスの方は、日本国内で事務所など事業の拠点(恒久的施設)を有していません。

回答

非居住者個人自らが役務提供をした場合には、「人的役務提供事業の対価」には該当せず、「給与その他人的役務の提供に対する報酬」に該当します。その場合には日本国内の恒久的施設を通じて役務提供しない限りは、日本で課税は発生しません。ただ租税条約によってはあらかじめ事前に「租税条約に関する届出書」を提出する必要がある場合があります。

法律根拠を以下にまとめていきます。

なお日本にいながら海外の法人にリモートワークで働く場合(今回の逆)には、以下をご参照ください。

https://probitas.jp/kokusaizeimu/kojinmuke/remotework/

非居住者の判定

そのフリーランスの方が非居住者に該当するかを検討しなければなりません。非居住者の判断基準はこちらをご参照ください。

https://probitas.jp/kokusaizeimu/kojinmuke/residentnonresident/

法律の根拠 =悩ましいポイント=

日本では、国内源泉所得に該当する場合、所得税が課税されることとなっています。その国内源泉所得のうち「人的役務提供事業の対価」「給与その他人的役務の提供に対する報酬」と紛らわしいものが2つあります。

人的役務提供と対価とは?(難しければ読み飛ばしてください!)

人的役務提供事業の対価に該当すると、日本国内の国内源泉所得に該当し、日本国内で税金が生じます。(所得税法161条第1項第6号)

その人的役務の具体例は所得税法施行令282条では以下のように定められています。

一 映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業

二 弁護士、公認会計士、建築士その他の自由職業者の役務の提供を主たる内容とする事業

三 科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業(一定の事業を除く。)

この所得税法第1項第6号に対応する通達として、所得税法基本通達161-21があります。

161-21 法第161条第1項第6号に規定する「人的役務の提供を主たる内容とする事業」とは、非居住者が営む自己以外の者の人的役務の提供を主たる内容とする事業又は外国法人が営む人的役務の提供を主たる内容とする事業で令第282条各号に掲げるものをいうことに留意する。したがって、非居住者が次に掲げるような者を伴い国内において自己の役務を主たる内容とする役務の提供をした場合に受ける報酬は、法第161条第1項第6号に掲げる対価に該当するのではなく、同項第12号イに掲げる報酬に該当する(平28課2-4、課法11-8、課審5-5改正)。

(1) 弁護士、公認会計士等の自由職業者の事務補助者

(2) 映画、演劇の俳優、音楽家、声楽家等の芸能人のマネージャー、伴奏者、美容師

(3) プロボクサー、プロレスラー等の職業運動家のマネージャー、トレーナー

(4) 通訳、秘書、タイピスト

まとめ

まとめると人的役務を提供するのが本人であれば「給与その他人的役務の提供に対する報酬」に分類され、他人であれば「人的役務の提供事業の対価」に該当します。

自ら人的役務を提供するのではなく、自分と雇用関係にある者や自己に専属する者などの、他人による人的役務の提供を行うことに対する対価を受け取る事業をいいます。自ら人的役務提供を行ったことによる対価は報酬・給与等に区分され、人的役務提供事業とは別の取り扱いとなります。

租税条約による取扱

ただし租税条約において、結論が変わる場合があります。なぜなら多くの租税条約においては、全く違う取り扱いになっているからです。

人的役務の提供を主たる内容とする事業の対価については、所得税法など国内の法律においては、一般の事業所得として区分して、別個の国内源泉所得とされていますが、多くの租税条約においては、一般の事業所得と同じになっています。

多くの租税条約においては、人的役務提供の事業の対価を「企業の利得」または「産業上または商業上の所得」としてとらえられています。そのような租税条約においては、国内に有する恒久的施設を通じて事業を行わない限りは、原則として租税が免除されることになります。ただし、あらかじめ税務署長に租税免除に関する「租税条約に関する届出書」を提出する必要があります。

日米租税条約の場合 =自由職業所得=

日米租税条約においては、「自由職業所得」という規定があります。組織に属していない独立したフリーランスの方はこの自由職業に該当します。

日米租税条約では、一方の国の居住者が他方の国において固定的施設(恒久的施設と同じです)を有し、当該報酬が固定的施設に帰属する場合のみ、居住地国でない国において課税をすることができるものとしております。ここで自由職業には、学術上、文学上、美術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含むものとしております。

日本タイ租税条約の場合 =自由職業所得条項がない場合=

日本タイ租税条約の場合には、給与所得と同じ扱いになります。したがって、タイからリモートでフリーランス業務を提供した場合には、短期滞在者免税の規定も適用されることになります。

最後に

プロビタス税理士法人では、国境を超える取引に係る税務(国際税務)を専門としております。もしご不明な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。