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【外国税額控除】自己申告は簡単?確定申告のポイントを解説

目次

ありがたいことに外国税額控除の問い合わせを受けることがあります。その中で、「来期以降は自分でやりたいのでやり方を教えてください」があります。確かにご自身でできればよいのですが、結構難しいかもしれません。「外国税額控除の確定申告」というテーマで記載しました。自力でやるための参考にしてもらえれば幸いです。

外国税額控除とは?

外国税額控除とは、国際的な二重課税を排除するために、外国で納付した外国税額を一定の範囲で日本の税額から控除する仕組みをいいます。

日本の居住者や内国法人が稼得した所得は、原則として、いわゆる全世界所得に対して所得税ないし法人税が課されることになります。そのため国外での取引等により相手国で課税の対象となる所得を有することになった場合、同一の所得に対して日本および相手国の双方で二重に課税を受けることになります。この二重課税を排除するための制度が外国税額控除です。

外国税額控除の確定申告は難しい

とは言え、外国税額控除は難しいです。なぜ難しいかを以下に紹介していきます。外国税額控除の税務調査は以下で紹介しています。

①”外国税”って何?

相手国の制度を理解しなければなりません。税の制度は国によってバラバラ。相手国の確定申告書を読み解きながら、どれが外国税を把握しないといけません。

トラップも多く、例えばアメリカのセルフエンプロイメントタックス(self employment tax)は社会保険料的な性格なので、外国税額控除の対象とはならないとされています。

米国自営業者税は外国税額控除の対象となるか

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/06/01.htm

また中国の増値税は法人の所得を課税標準としない消費税的な性格の税金ですので、二重課税にならず、外国税額控除の対象とはなりません。

②二重課税部分を把握する

外国税を把握できたからと言って、すぐに外国税額控除の対象になるわけではありません。日本との二重課税になっている部分のみが外国税額控除の対象となります。したがって、二重課税になっているかどうかの確認が必要になります。

③外国税額控除が適用できるタイミングの把握

外国税額控除が適用できるのは、その外国税の納付が確定した日もしくは実際に納付した日になります。日本の確定申告書提出期限は諸外国に比してダントツに早く、往々にして一年ズレてしまうことが多いです。

ただ所得の発生自体は事前に生じているために、控除限度額の設定は前事業年度に行っておかなければならないことが多いです。

外国税額の課税所得の発生と実際の納付、そして日本の制度とのタイミングの整合性が非常に難しいです。

④租税条約の確認が必須

日本の制度と租税条約であれば、租税条約が優先されます。

したがって、租税条約で定められている税率以上の外国税額控除の適用はできません。

例えば日米租税条約であれば、配当は一般的には10%になります(親子間であれば5%などの例外はあり)。したがって、外国税額控除で控除できるのは10%のみです。詳細はこちらもご参照ください。

良くある事例でいえば、Youtuberの方が、アメリカで30%の源泉徴収がされてしまっていたとしても、日米租税条約では使用料は免税と定められているから、外国税額控除で控除できるものはなく、支払った30%部分は払い損になり、二重課税は排除できません。

以下の記事もご参照ください。

⑤みなし外国税額控除

中国やブラジルとの租税条約では、みなし外国税額控除という制度(タックス・スペアリング・クレジット)が存在しています。その所得源泉地国で減免された税金について本来の課税がなされたとみなして、日本において外国税額控除を認めるという制度です。

約20か国ほどの租税条約において、みなし外国税額控除の制度がありますが、代表的な国が中国やブラジルだと思います。そのような国の案件があれば要注意になります。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。