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【海外移住】私の年金どうなるの?税理士が解説

海外移住の際に問題になるのが年金。税金の取り扱いは移住先の国によって様々です。移住先として人気のマレーシアを一つ例にとって、出国の際の年金に対する税金の取り扱いを解説したいと思います。
目次

最近は海外移住に関してのご相談を多く受けるようになりました。海外移住の際に問題になることの一つが年金です。特に定年後に移住される方のほぼすべてが年金について心配されています。ちゃんともらえるのか?税金はどうなるのか?

そして弊社で一番多い移住先がマレーシアです。

日本人の住みやすさ(医療や教育など)に加えて、ビザの取りやすさなどもあるように聞いています。定年退職後、年金生活をマレーシアで過ごしたいという問い合わせを受けました。マレーシアを一つ例にとって、その場合の年金に対する日本の税金の取り扱いをまとめました。

Q公的年金についての質問

定年退職し、退職金は日本に残しておいて、公的年金(国民年金や厚生年金など)はマレーシアで受け取るつもりです。この場合、私がマレーシアにおいて受ける年金についてどのように課税されるのでしょうか

なお私の年金は日本の銀行口座に振り込まれ、マレーシア支店で引き出す予定です。ただマレーシアの銀行に口座開設し、そこに年金を振り込んでもらうことも考えています。

A公的年金についての回答

マレーシアと日本の租税条約の中には退職年金の規定があります。その中で、退職年金については居住地国のみの課税となっているため、日本においては非課税となります。

これは、年金の振込先が日本であろうが、マレーシアであろうが同じ扱いになります。

原則的な取扱い(国内法)

非居住者が受ける公的年金(国民年金、厚生年金、厚生年金基金、共済年金など)は国内源泉所得に該当します。したがって、非居住者が受ける日本の公的年金は税率20.42%で源泉徴収されます。この場合、源泉税の課税標準は、その支払いを受けるべき年金額から月数を乗じて計算した金額となります。

租税条約(マレーシアの場合)

ただ原則的な取扱いに関わらず、マレーシアの場合には、マレーシアとの租税条約の適用により、日本では課税されません。その内容についてご説明いたします。

マレーシアとの租税条約の18条で退職年金について規定されています。過去の勤務につき、マレーシアの居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、マレーシアにおいてのみ租税を課することができるとされています。居住地国での課税です。したがって、日本の非居住者でマレーシア在住の方が現地で受け取る公的年金については、日本において課税されません。そして支払い方法については、関係がありません。マレーシアの銀行に振り込もうが、日本の銀行に振り込もうが関係ありません。

なお、マレーシアの課税については、日本の年金は課税されないという説明を受けたこともありますが、最新の情報については現地の会計事務所にご確認いただければと思います。この場合、日本年金機構及び加入している厚生年金基金を通じて、それぞれの所轄税務署に租税条約に関する届出書を提出する必要があります。

弊社では租税条約の届出書の作成および提出を10万円で請け負っております。

Q民間保険(個人年金保険)についての質問

それでは民間の生命保険契約に係る個人年金保険からの年金収入がある場合はどうでしょうか?

A民間保険(個人年金保険)についての回答

原則的な取扱い(国内法)

日本において契約した、民間保険会社の年金保険の保険料を、年金形式で受けている場合には、所得税法的には、国内源泉所得に該当するため(所得税法施行令287条)、源泉徴収の対象になります。

租税条約(マレーシアの場合)

マレーシアと日本との租税条約には、保険年金に関する規定がありません。その他所得条項において、租税条約に規定されていない所得で相手国に源泉がある所得は源泉地国の課税とされています。したがって、日本で課税されることになっています。原則の通り、20.42%の税率で分離課税されるものと考えます。

仮にアメリカの場合には、日米租税条約が適用されますが、第17条に年金の規定があります。その規定によると居住地国課税とされていますので、アメリカに移住した場合には、住んでいるアメリカで課税されることとなり、日本では課税されません。

最後に

プロビタス税理士法人では海外移住に係る税務相談を行っております。もしご依頼を検討されているようであれば、お気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。