<質問>
海外に保有している賃貸不動産から賃料収入を得ています。日本の確定申告についての質問を受けました。確定申告について留意すべき事項を教えてください。
1.回答
あなたが居住者(非永住者以外の居住者)であれば、全世界で保有する資産から生じる所得について、日本で確定申告の義務があります。
居住者の定義はこちら↓
したがって、海外に保有している不動産から賃料収入があるのであれば、日本で不動産所得として確定申告をしなければなりません。
2. 不動産所得の計算方法
海外にある不動産であったとしても、不動産所得の計算方法は、日本の所得税法によって行います。日本に不動産があるものとした場合に経費になるものが、経費として認められると考えてください。減価償却費に関しても同じです。
ただし、海外に保有する中古で取得した不動産の賃貸による所得が赤字の時は、その赤字のうち中古不動産の建物の減価償却費相当額の損失は生じなかったものとみなされます。
3. 不動産所得の計算方法(減価償却の特例)
基本的には海外不動産であったとしても、日本での不動産所得の計算方法は、日本の不動産と同じです。ただし以下の要件を満たす場合には、要注意です。
①国外にある不動産であること
②中古であること
③耐用年数が簡便法(※)であること
国外中古不動産に係る不動産所得の金額が赤字の場合、その赤字の金額のうち、中古不動産の建物の減価償却相当額の損失は生じなかったものとみなされます。
(※)簡便法とは
中古不動産の耐用年数は、法定耐用年数に代えて、使用可能期間として見積もった年数によるのが原則です。ただその見積もりが困難な場合には、次の簡便法により算定した年数を使うことができます。
イ 法定耐用年数の全部を経過した資産…その法定耐用年数の20%に相当する年数
ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産…一定の方法により計算した年数
例えば木造の建物の場合、耐用年数は22年です。したがって、築年数が22年を経過した木造の不動産は、簡便法であれば4年が耐用年数になります。
なお伝え聞いた話ですが、アメリカでは耐用年数は住宅が27.5年、非居住用不動産は39年なんだそうです。その耐用年数を使用して、日本の不動産所得を算定している場合には、この特例の適用はありません。簡便法を使っていないからです。
4 不動産所得の計算方法(減価償却の特例)の留意点
確定申告をするにあたって、通常の収支計算書(もしくは青色申告決算書)を作成しなければならないのですが、その確定申告書に付表「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例」を作成して添付しなければなりません。
ちなみに海外不動産であっても、その不動産所得に対して青色申告の適用はあります。5棟10室の規定の対象だと考えます。
不動産所得が生じるのであれば、青色申告承認申請書は提出し、複式簿記による帳簿を作成しましょう。節税につながります。
5. 外貨建て取引の円換算レート
原則的にはその取引を行った時の仲値(TTMレート)が適用する為替レートとされています。
しかしながら、不動産所得、事業所得、山林所得または雑所得を生ずべき業務に係るこれらの所得の金額の計算においては、継続適用を条件として、売上その他の収入または資産については取引日のTTBレート(電信買相場)、仕入れその他の経費または負債については取引日のTTSレート(電信売相場)により換算することができます(所得税法第57条の3他)。
6. 外国税額控除の適用
海外に保有する投資用不動産から生じる所得について、その所在国でも課税されることがあります。その国で課税されたものについては、日本において外国税額控除の適用を受けることができます。
もちろん、その海外での税金を租税公課として経費処理することもできます。ただ外国税額控除の適用の方が有利になることが多いと考えます。ただ経費処理か外国税額控除かは一括で行わなければなりません(部分適用はできません)。
7. 最後に
上記の外国税額控除の適用がある場合には、自力で確定申告するのは難しいかもしれません。
ご不明な点などございましたら、何なりとお申し付けください。
なお国外不動産の売却に関してはこちらもご参照ください。