海外赴任の際には、考えなければならないことがヤマほどあると思います。住宅の決定や引っ越し、健康診断や予防接種。
子供がいる方は現地の学校や教育機関の決定、もちろん現地情報の収集なども必要ですし、金融機関などの手配も必要です。 我々は日本の会計事務所ですので、公的手続きの中でも税金について解説いたします。

税金の話をする前に…
1年以上日本を離れ、海外に居住する場合には、市区町村に国外転出届を提出することになります。これにより転出証明書が発行され、住民登録が抹消されます。住民票の除票といいます。
注意点としては、登録してあった印鑑証明書も抹消されますので、印鑑証明書が必要となる手続きは事前に済ませておくことが必要です。その他選挙権やマイナンバーカードにも影響が及ぶはずです。(ただ弊社のお客様でも国外転出届を必ずしも皆さん出しているわけでもなさそうですが…)
また社会保険については、日本国内企業から引き続き給与が支払われるかどうかで処理が異なってきます。 海外赴任後も引き続き日本国内企業から給与が支払われるのであれば、社会保険は継続されますので、健康保険や厚生年金は維持されます。何もする必要はなさそうです。
逆に日本国内企業から給与が支払われなくなるのであれば、被保険者資格を喪失することになるので、社会保険は継続できません。詳しくは社会保険労務士にお問い合わせください。
所得税について
日本国内の会社に勤めている給与所得者が、1年以上の予定で海外に転勤や出向する場合、所得税法上は非居住者になります。
非居住者が国外勤務で得た給与には、原則として日本の所得税は課税されません。(ただし役員の場合は別になります。)タックスアンサー1920 海外出向と所得税額の精算
非居住者についてはこちらもご参照ください。
国際税務をまず知りたいと思ったら…”国際税務の基礎用語紹介”
注意点として、給与以外にも課税の対象になるものがあるです。代表的なものが、海外赴任中にご自宅を賃貸している場合の不動産所得です。
不動産所得は海外在住の方であっても、日本で確定申告をする義務があります。まず出国の前に、納税管理人の届出書を出国前に税務署に提出する必要があります。
納税管理人とは、国外在住で国内不在の非居住者に代わって、確定申告の手続きを行い、さらには納税の手続きを代行をする、税務署の窓口となる人をいいます。
納税管理人には資格は不要ですので、税理士である必要はなく、ご親族の方などでも大丈夫です。
住民税について
住民税は原則として1月1日における住民登録に準じて課税されます。したがってその年の1月1日に日本国内に住所がなければ課税が発生することはありません。
固定資産税・都市計画税(地方税)について
日本国内に有する固定資産については、所有者が非居住者であったとしても固定資産税・都市計画税(地方税)が課税されます。
持ち家がある場合
持ち家の場合、基本的な選択肢としては3つ考えられます
- 処分する
- 空き家にして管理する
- 賃貸借契約をする
このうちの③の賃貸借契約ですが、家賃収入を得ることができますし、通風や通水、清掃などがされるために、空き家にしておくよりも家が傷みにくいというメリットがあります。
③の場合には不動産所得になりますので、海外在住の方であったとしても日本での確定申告義務がありまして、納税管理人を届け出ておく必要があります。 賃貸借期間中にトラブルが発生する可能性もあって、リロケーションサービスの業者さんに管理を委託することが一般的であろうと思います。
非居住者に家賃収入を支払う場合には20.42%の源泉徴収を行う必要があります(個人が自己またはその親族の居住用の用に供するために土地や建物を借りる場合に支払うものについてのみ源泉徴収義務は免除されます)。しかしそれは非常に煩雑な作業です。
リロケーションサービスの業者さんに業務委託していれば、その業務手続きはすべて代行してもらえます。その他、帰任が決まったものの、自宅は賃貸中のためすぐに入居できないというトラブルは多いと聞きます。
賃貸借契約期間中の途中解約については、借地借家法上、基本的に難しいケースが多いと聞きます。海外赴任者の不動産を多く管理されているところに依頼するのが安心かもしれません。
持家について住宅ローンがある場合
住宅ローン控除を受けている場合
海外赴任により出国する前までに、所轄の税務署に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出してください。詳しくは以下をご参照ください。
不動産所得の経費になるのか
不動産所得を得るための経費になりますので、住宅ローンの利息は経費になるものと考えます。
家賃収入を確定申告しなかったらどうなのか?
このような問い合わせを受けることがあります。海外/日本国外に居住していたとしても家賃収入があれば確定申告をすることは義務です。
無申告が一番最悪です。過去5年分にさかのぼって確定申告をすることをお勧めしています。減価償却なども考慮すると、意外と大きな税金が発生しないことが多いです。
もし確定申告をすべきことを気づいたという方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。 弊社も国際税務が専門で、海外在住者(国外在住の非居住者)の不動産所得についてサービス提供していますので、興味などございましたらお気軽にお問い合わせください。