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【実録】国外転出時課税(出国税)について税務署で聞いてきた

有価証券等を1億円以上保有している人が海外移住する際に気にしなければならないのが出国税。ただ情報が少なく、いざ適用する際に悩むことが多いです。その悩むポイントを解説します。
目次

いま2022年で、2020年から始まったコロナ禍の真っただ中ではありますが、最近は海外移住の相談を受けるようにもなりました。

海外移住の理由は様々です。転勤による人もいますし、お子様の教育のために移住される方もいます。日本の税金の高さを理由にする方もいます。

その時に気を付けたいのが、国外転出時課税、いわゆる出国税です。我々も、しばらく海外移住の案件がなかったのですが、出国税の対象になる方の税金は高額です。

間違ったことを言ってはいけないので、不明な点をお客様と一緒に税務署に確認しました。その内容を共有します。

出国税とは?

平成27年7月1日から国外転出時課税制度(“出国税”)が施行されています。時価1億円以上の金融資産を保有している富裕層が国外転出した場合などに、その含み益に所得税が課税される制度です。

この制度は、キャピタルゲイン非課税国(シンガポール、香港など)に移住して株式等を売却することで、税負担から逃れることを防ぐための措置です。アメリカなどの先進国ではすでに導入されている制度で、日本ではようやく導入されたものです。

国外転出時に保有している有価証券等の価額が1億円以上の居住者が対象になります。

なお、国外転出時課税の対象者に国籍は問われません。外国籍の人であっても対象者となりますが、一定の在留資格 (外交、教授、芸術、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、短期滞在、留学等) で在留していた期間は含みません。したがって、いわゆるエクスパットの方は対象にならないことも多いかもしれません。

また”有価証券等”の範囲ですが、以下のものが含まれます。暗号資産やストックオプションなどは含まれないものと考えます。

  • 有価証券、匿名組合の出資持分
  • 未決済の信用取引
  • 未決済のデリバティブ取引

※有価証券には、株式、国債、地方債、社債、投資信託の受益証券などが含まれます。なお、株式は上場・非上場を問わずに対象となります。

質問の内容

私のお客さまで、2022年中に海外転居をされる方がいます。有価証券等が1億円を超えるので、出国税の対象になります。いずれも金額が大きいので、税務署にお客様と一緒に確認しに行きました。その内容を共有いたします。

前提

  • 納税者は、すでにビザを取得し、これから現地に生活の本拠を移す予定です。
  • 有価証券を1億円以上有していますので、国外転出時課税(以下、出国税)の検討が必要です。
  • 納税管理人は、税務代理人であるプロビタス税理士法人の片山康史が選任される予定です。
  • 納税猶予制度を使う予定はありません。

質問内容

<確定申告書の提出時期について>

(1)・翌年3月15日が提出期限という理解で良いか?

<納税について>

(2)・納期限も翌年3月15日が提出期限という理解で良いか?

<納付税額の計算方法について>

(3)・みなしの譲渡については、出国時点での株価で良いか?

(4)・銘柄によっては、含み益もある株式も含み損もある株式もある。上場株式および非上場株式間での相殺はできないものの、上場株式および非上場株式の内部では、証券会社や口座をまたいでも、相殺は可能で良いか?

(※)

<住民税>

(5)住民税は対象外で良いか?

<翌年3月15日に提出する確定申告書について>

(6)出国前の現時点ですでに複数の株式売買を行っている。

株式等に係る譲渡所得等の金額の明細書の書き方はどうすればよいか?(出国税におけるみなし譲渡も合算した金額を記載するのか?)

それとも国外転出等の時に譲渡又は決済があったものとみなされる対象資産の明細書(兼納税猶予の特例の適用を受ける場合の対象資産の明細書)《確定申告書付表》に記載さえすればよいか?

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2020/pdf/X/X31.pdf

<出国中の取り扱い>

(7)納税猶予を使わない場合は、令和5年度以降は確定申告や報告義務等が生じないという理解で良いか?

<出国後に帰国した場合の取り扱い>

(8)出国後、帰国までに売却した株式の譲渡損益については、日本での申告義務はない(租税条約で義務付けられる特殊な株式は除く)

(9)・帰国した時点で保有している株式については、5年以内に帰国する場合は更正の請求ができるという理解で良いか?仮に帰国した際に大阪に居住する場合、どこに更正の請求をするのか?

(10)・出国中に売却した株式については、その海外でいくら安く売却したとしても、高く売却したとしても、日本での課税関係は生じないという理解で良いか?

税務署の回答

(1)はい。提出期限は翌年3月15日。

(2)はい。納期限は翌年3月15日。

(3)はい。株価は出国時(生活の本拠を移す時)を使用します。

(4)はい。上場株式内での含み益と含み損の相殺は可能。非上場株式も同様。ただ上場と非上場の相殺は不可。

(5)住民税は対象外と思うが、自治体で確認してほしい。

(6)手順書を渡される。銘柄ごとに記載が必要で非常に煩雑。

(7)はい、納税猶予を使わない場合は、出国時のみの確定申告。

(8)はい。海外居住中に売却した株式について、日本での確定申告義務はありません

(9)5年以内に帰国した場合に、株式を引き続き保有していたとき、更正の請求により還付請求します。

5年を超えて帰国した場合には、還付を受けることはできません。

納税猶予を使う場合には、10年まで延長できる方法はあります。

※帰国した場所での更正の請求をする。大阪に帰国した場合であれば、大阪の税務署に更正の請求をする。

(10)海外居住中に売却した株式について、日本での確定申告義務はありません

最後に

プロビタス税理士法人では出国税の案件も対応しております。もし海外転勤や移住、海外赴任などの際に出国税が気になるようでしたら、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。