港区で税理士・会計事務所に相談するなら、プロビタス税理士法人へ

海外に保有する不動産を売却した場合の確定申告(投資不動産の譲渡)

個人の方向けの国際税務。年間100件以上の実績。お気軽にお問い合わせください。
目次

<質問>

海外に保有している不動産を売却しました。日本の確定申告について留意すべき事項を教えてください。

回答

あなたが居住者(非永住者以外の居住者)であれば、全世界で保有する資産から生じる所得について確定申告の義務があります。

居住者の定義はこちら↓

したがって、海外に保有している不動産であったとしても、売却収入があるのであれば、日本で譲渡所得として確定申告をしなければなりません。譲渡所得というのはキャピタルゲイン(capital gain)とお考えください。

譲渡所得(キャピタルゲイン)の計算方法

海外にある不動産であったとしても、譲渡所得(キャピタルゲイン)の計算方法は、日本の所得税法によって行います。

譲渡所得の計算方法 = (売却額) – (取得費) – (譲渡費用)

土地や建物の譲渡所得に対する税金は他の所得と区分して計算します。分離課税と言います。適用される税率が異なります。譲渡した不動産の保有期間が、その年の1月1日現在で5年超か否かにより、短期と長期に分類されます。

短期譲渡所得:税率39%(内訳 所得税30%、住民税9%)

長期譲渡所得:税率20%(内訳 所得税15%、住民税5%)

なお譲渡費用は、日本の所得税法で認められているものが対象になります。その国の商習慣において、必須の経費であったとしても、その経費が譲渡費用として認められるのは難しいと考えます。

譲渡所得の計算方法(特に難しい取得費について)

譲渡所得の計算方法 = (売却額) – (取得費) – (譲渡費用)

取得費の計算にあたって、建物は減価償却をします。減価償却費の把握のためには、建物の取得価格を把握する必要があります。

売買契約書で確認できればいいのですが、もし土地と建物で一括の記載しかない場合には、何らかの形で按分するしかありません。

外国税額控除の適用

海外に保有する投資用不動産から生じる所得について、その所在国でも課税されることがあります。その国で課税されたものについては、日本において外国税額控除の適用を受けることができます。

ただ必ずしも外国税額控除の適用があるわけではありません。

例えば中国の場合、居住用不動産以外の譲渡であれば、増値税が課税されるようです。それは売却額に対して課税されるものであり、キャピタルゲインに対して課税されるものではありません。したがって日本との二重課税とはならず、外国税額控除の適用はないものと考えます。

居住用財産の譲渡所得の特例

投資用の不動産などは何の特例もないですが、ご自身が住んでいた居住用の不動産は特例があります。

日本帰国前にご自身が住んでいた海外不動産で、日本帰国後にその不動産を売却した、という相談を受けることがあります。

軽減税率の特例「長期譲渡所得の課税の特例(措置法31条の3)」は、対象が日本の不動産なので、特例の適用はありません。しかし海外不動産であっても「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」の適用を受けることが出ます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

3000万円の特別控除の特例自体は、要件を読む限り、日本に所在する不動産に限定されているわけではありません。したがって、日本帰国後3年以内に売却した場合には、特例の適用を受けることができます。

ただその不動産に居住していたことを証明する必要があります。日本の不動産であれば、その不動産に住んでいたことの証明として住民票などを確定申告書に添付します。しかし海外の不動産について、その不動産に居住していたかを証明するのが困難なことも考えられます。

本当に悩むところですが、ご相談いただければと思います。

円安時代の大敵!為替に要注意!

海外に保有していた不動産を売却した場合、為替の影響が気になります。特に現在の為替レートは円安傾向です

例えば以下の場合、どのように売却益(キャピタルゲイン)を計算するのでしょうか?

・2000年に海外で不動産購入 (1ドル=110円)

・2010年に来日

・2024年に海外の不動産を売却 (1ドル=160円)

キャピタルゲインですが、以下のように計算します

売却額(USD)×160円 – 購入額(USD) ×110円 – 減価償却 – 譲渡費用など売却手数料

当初に思った以上にキャピタルゲインが大きくなるはずです。

裁判例のご紹介

なお以下の裁判例もあります。簡単に解説します。

国税不服審判所平成22年6月28日採決 名古屋地裁平成24年11月19日判決 名古屋高裁平成25年5月16日判決で確定

2001年カナダで不動産取得 (1カナダドル=80円)

2005年来日で居住者

2007年カナダの不動産売却(1カナダドル=100円)

納税者は購入額(取得費)の計算も1カナダドル=100円で計算したところ、税務調査にて1カナダドル=80円で換算すべきということで裁判になったものです。裁判結果としては、取得費の計算においては、取得日の為替レートを適用すべき(所得税法57条の3)とされました。

最後に

海外不動産の譲渡の確定申告の実績があります。

ご不明な点などございましたら、何なりとお申し付けください。

なお国外不動産の賃貸収入に関してはこちらもご参照ください。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。