
- バックオフィスのコストを抑えたい
- 顧問税理士が国際税務に詳しくない
- 税理士が英語対応してくれない
- 会計事務所に質問しても、すぐに答えが来ない
最近多い問い合わせの一つです。
2023年現在、コロナ禍が終焉を迎え、世界経済に活気が戻ってきました。海外進出している日本企業においても、進出先の各国の経済再開により、海外子会社でも利益が出るようになりました、と。
で、そこではじめて「どうやって海外子会社の利益を日本に還流させようか?」と疑問を持って、弊社にご相談に来られるケースです。進出先の税制などの制度的制約もあって、日本親会社への利益回収や利益送金は簡単ではありません。
こちらでは、一般的な利益還元方法をいくつかご紹介いたします。
どの方法が有利になるかは、各国の制度や、あるいは日本との租税条約の内容によります。したがって、このブログでは、どの方法がお勧めという案内はいたしません。どの方法が有利になるかはケースバイケースですので、お問い合わせいただければと思います。
出資
海外子会社の株式を保有している日本親会社は、海外子会社から配当を受けることができます。
この場合の海外子会社、法律上は外国子会社と言いますが、外国子会社とは、企業グループで25%以上の株式等を有しているものを言います。(ただ租税条約等により国によっては25%ではない場合もあります。例えばアメリカであれば10%でOKです)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/1282/qa/58.htm
その海外子会社からの配当は、95%が非課税になるという制度です。外国子会社配当益金不算入制度と言います。
例えば日米租税条約によると、親子間配当(出資額10%以上)であれば免税になります。したがって、アメリカ子会社からの配当はアメリカでは免税になります。日本でも外国子会社配当益金不算入制度により、ほぼ非課税(5%だけ課税)になります。とても税制的には有利です。二国間の直接的な投資交流の促進を図る主旨だと解されています。
融資
日本親会社が、海外子会社に融資をして、その利息を受け取ることにより、海外子会社の利益を日本に還元させることができます。
配当と比べてみましょう。例えば日米租税条約によると、利息は免税になります。しかし、日本では非課税にはならず、収益として課税になります。日米間であれば、配当のほうが有利でしょう。
検討しなければならないことを2つご案内します。
①過少資本税制や過大支払利子税制
日本にもある税制ですが、先進国であれば、過少資本税制や過大支払利子税制があります。
上記では配当が有利と言いましたが、では配当を採用すべきかというとそうではありません。融資にもメリットがあります。それは、配当の支払いは経費になりませんが、利子の支払いは経費になるということです。海外子会社の利益圧縮に有益です。
ただし、行き過ぎた利益圧縮を防止するために、過少資本税制や過大支払利子税制が用意されています。国によって制度はそれぞれですので、最新の情報は現地の会計事務所にお問い合わせください。
②金利の設定
利益の圧縮のためには、高い金利の利率にしたくなります。ただし関連会社間の利息の支払いは、移転価格の観点による検証が欠かせません。
国税不服審判所(平成28年2月19日裁決)によると、”あるべき標準的取引価格を求めようとする独立企業間価格の算定に当たっては、借手の銀行調達利率による方法が最も適当で、一方の当事者の貸手の銀行調達利率による方法が次いで適当であり、国債等により運用するとした場合に得られるであろう利率による方法は、上記いずれの方法も用いることができない場合に用いることが相当と解される”とされています。そして、借手の信用リスクを加味して、一定のスプレッド(0.5%-1%)を加算すべきとされています。
ただ2023年現在、先進国の中では日本だけが劇的な低金利です。利上げを継続して行っている他国との利率の差は大きくなるばかりです。貸手である日本と、借手である海外との間に大きな利率の差がある場合、どちらの利率が有効かは悩ましいところです。また為替も大きく変動しております。借入期間が10年などとなる場合に、どの利率が一番適切なのかは、本当に悩ましいですね。
ロイヤルティ
ロイヤルティ、いわゆる使用料の支払いを海外子会社から日本親会社にすることによって、利益を還元するというのも一般的な手法です。使用料の対象になるのは以下の無形資産が代表的です。
イ 技術革新を要因として形成される特許権、営業秘密等
ロ 従業員等が経営、営業、生産、研究開発、販売促進等の企業活動における経験等を通じて形成したノウハウ等
ハ 生産工程、交渉手順及び開発、販売、資金調達等に係る取引網等
ロイヤルティの支払いに関しても、移転価格の観点の検証が必要になります。具体的な内容については、以下をご参照ください。
https://probitas.jp/kokusaizeimu/hojinkokusaizeimu/softwareroyalty/
https://probitas.jp/kokusaizeimu/hojinkokusaizeimu/royaltypercentage/
リース料
これは、あまり一般的な手法ではないかもしれません。親会社が有していた有形固定資産を海外子会社に賃貸することによって、海外子会社からリース料を受け取るという手法です。
棚卸資産
日本親会社から海外子会社へ棚卸資産を販売するときに、販売価格を調整することによって、利益を日本親会社に還元することも考えられます。
ただし移転価格の観点では、棚卸資産の販売に関しては、第三者価格で販売することが求められています。つまり独立した別法人間での売買の場合に適用される価格を使いなさい、ということになっています。親子間取引の時だけ、別の販売価格を使うことは許されません。
ただ、親子間で仮の販売価格を適用してとりあえず売買してしまうことはあります。そのような場合には、根拠が必要になりますが、期末に価格調整金という名目で調整することは認められています。
役務提供
①支援料
日本親会社から海外子会社に有形無形の形で支援することは良くあることでしょう。その場合に、日本親会社は海外子会社にその支援料を請求することができます。請求していない場合も多くありますが、そこは日本の税務調査でもよく指摘を受けるポイントです。詳しくはこちらをご参照ください。
https://probitas.jp/kokusaizeimu/hojinkokusaizeimu/zeimuchosa_taikakaishu/
海外子会社での販売促進サポート、海外工場の立ち上げなどが税務調査で狙われやすい印象です。その場合に、一定額を海外子会社から回収しておくべきです。日本から派遣した人員費用相当額や旅費交通費などが対象金額になるはずです。
②マネージメントフィー
海外子会社ではなく、日本親会社(本社)でグループ全体の経営計画の策定、および海外での事業戦略、財務管理、人事規定の策定、経理業務をしている場合があります。その場合に、各海外子会社に対してマネージメントフィーという名目で請求することができます。
ただその海外子会社がある国において、その税務当局から使途不明金として否認されることもありました。マネージメントフィーの算定根拠は事前に明確にしておく必要があります。現地の会計事務所にも事前に確認しておく必要があるでしょう。
最後に
プロビタス税理士法人では、日本企業の海外進出をサポートします。2023年現在、歴史的な円安が進行し、日本円の価値が落ち続けています。個人的には、外貨を稼ぐ力を付けていく必要を痛感しています。一緒に外貨を稼いでいきましょう!ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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