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【国際税務専門の税理士が解説】台湾と税金

目次

はじめに

2023年5月、台湾の法人から日本進出の相談を受けて、台湾の台北に行ってきました。とても活気があって、皆さん優しく、そして親日的な雰囲気でした。また旅行者が訪れるようなお店は日本語が通じることも多く、安心して旅行することができました。台湾からの日本進出はぜひ成功してもらいたいと思いましたし、また日本から海外に進出するにあたって台湾は大きな選択肢になりそうでした。

そこで我々として台湾との交流に貢献できること、つまり会計や税務について、まとめました。いずれも2023年5月時点の情報になります。最新の情報は適宜ご確認ください。

台湾の税制について 税率

(法人所得税)

所得12万台湾元以下の場合…0%

所得12万台湾元超の場合…20% (ただし課税所得額の12万台湾元超過分の半額が税額の上限)

コメント:日本企業が台湾子会社を持っている場合、タックスヘイブン対策税制(cfc税制)の対象になるかもしれないですね。台湾子会社を設立する場合には、タックスヘイブン税制の適用除外対策を講じる必要があります。

ちなみにサンリオさんが台湾子会社についてタックスヘイブン対策税制の対象になる旨の指摘を受けていることがニュースになっていました。

https://gamebiz.jp/news/354104

(個人総合所得税 以下”個人所得税”)

累進税率…5-45%(詳細は不明ながら、日本と同じイメージとのこと)

(消費税)

標準税率は5%

台湾の税制について 課税対象

(法人所得税)

登記としては日本と同じで、株式会社、支店、駐在員事務所の選択があります。

台湾域内で登記されている株式会社は、全世界所得課税により確定申告をする必要があります。

なお駐在員事務所は確定申告の義務はありません。

(個人所得税)

以下にジェトロのウェブサイトの内容を引用します

台湾での源泉所得がある外国人は、その所得について所得税を納めなければなりません。

外国人は居留期間に応じて非居住者と居住者に分けられ、その納税方法は次の通り

①1課税年度(1月1日~12月31日)において、台湾滞在が90日以内の場合、台湾での所得はそれぞれの徴収率(給与は原則18%)に応じて源泉徴収され、申告の必要はない。

ただし、源泉徴収に該当しない所得(家賃収入等)は出国の際に申告しなければならない。

②1課税年度において、台湾滞在が91日以上183日未満の場合、台湾での所得は源泉徴収される。

ただし、源泉徴収に該当しない所得(海外雇用主が台湾での役務提供に対して支払う報酬を含む)については、徴収率に応じて納税申告の必要がある。

③台湾国内で労務の提供による給与所得については、次の3要件を満たす場合には、日本でのみ課税され、台湾では課税されない〔日台租税協定第15条第2項〕。

(1)日本居住者が暦年度中に開始または終了する12カ月の期間において、台湾に連続または累計で滞在日数が183日を超えない(暦年度での日数計算のみではなく、入国または出国するいずれかの12カ月においても、台湾滞在期間が182日以内であることが必要)。

(2)当該報酬が、台湾の居住者でない雇用主またはこれに代わる者から支給されている。

(3)当該報酬が、当該雇用主の台湾での恒久的施設または固定的施設により負担されていない(雇用者である日本法人の台湾にある恒久的施設(台湾支店等)が負担していないことの意)。

なお、これら3要件を満たし、納税が必要でない場合も、暦年で91日以上の滞在となる場合には、申告自体は必要である

確定申告の時期

法人も個人もすべて暦年の事業年度になりまして(つまり12月決算)、すべての人が5月1日から5月31日までの間に確定申告をする必要があります。

街中で、下のような横断幕がかかってました。5月中に確定申告をしてね、スマホでもできるよ、という内容ですね(簡単な中国語なら読むことができます)。

二重課税の排除としての租税条約

台湾はその歴史的な経緯から、中国国土の一部でありながら、法施行は中国本土と同一ではありません。

そもそも日本と台湾は国交がありません。(話はそれますが、台湾には世界遺産がありません。台湾は国家として認められておらず、ユネスコに加盟できないためです。写真は有名な観光地 九分です)

海外に進出する際には、常に日本と進出国の間での二重課税が問題になりますが、その排除をするために二国間で租税条約を締結します。しかし日本と台湾は国交がないので、租税条約を結ぶことができません。

そこで2017年、民間の団体の間で、租税条約に匹敵する”取り決め”が締結されました。日台民間租税取り決めと言います。日本の窓口は公益財団法人日本台湾交流協会で、台湾側の窓口は亜東関係協会です。中身はほぼ租税条約と同じになります。内容について簡単に解説します。

日台民間租税取り決めの内容

①配当、利子、使用料について

いずれも軽減税率が適用されます。

配当: 10%

利子: 10%(台湾の権限のある機関等(政府や中央銀行など)が受け取る利子は非課税)

使用料: 10%

適用を受けるための手続きについて

台湾の居住者が、日本での軽減税率の適用を受けようとする場合には、租税条約の適用を受ける場合と同様に、一定の事項を記載した「外国居住者等所得相互免除法に関する届出書」を、最初に支払うを受ける人の前日までに、源泉徴収義務者を経由して所轄税務署長に提出することとなっています。(所得相互免除法規則)

日本の居住者が、台湾で軽減税率の適用を受けようとする場合には、台湾の会計事務所に確認をする必要があります。

②譲渡所得

原則は非課税。ただし恒久的施設に関連する資産、不動産、不動産化体株式は課税。

③給与

暦年ベースで1年間の滞在期間が183日を超える場合は課税

④事業所得

PEなければ課税なしというのは、国際税務の大原則であり、日台民間租税取り決めでもその通りです。ただし事前の手続きが必要で、その手続きが煩雑だと聞きました。

台湾にPEのない日本の親会社が、台湾居住者の顧客に役務提供をして対価を受け取った場合、原則は20%の源泉徴収が必要です。しかし日台民間租税取り決め適用により免税になります。

ただ日台民間租税取り決めによる免税申請は4~6か月かかるとのことなので、早めの対応が必要です。

まずは台湾の会計事務所と協力して早急な対応をすることになります。

なお免除申請が認められず、台湾で20%の源泉徴収が還付されなかったとしても、日本で外国税額控除の適用を受けることはできないと考えます。

最後に…

台湾に行ってみて感じたことは、日本人がビジネスをしやすい環境なのではないかということです。

台湾には歴史的な背景もあって制度が日本と似ている(戸籍制度があるなど)こともあり、また親日家の方も多くいらっしゃるようです。

たとえば私が好きな神田のラーメン屋 カラシビラーメン鬼金棒が台北にあって、日本と同じように大行列でした。なんか嬉しかったですね。

台湾の方の中でも日本でビジネスをしたいと思う方が多いのではないかと思います。

コロナが明けて、両国間の交流が進んでいくのではないかと実感し、その国際交流の一助になれればと思っております。

台湾関連で興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆者

片山 康史

税理士 / 中小企業診断士

プロビタス税理士法人代表。 「自分の知識と経験で皆を幸せに」をモットーに、税務の問題を解決する情報を発信しています。外資系企業向けの国際税務が得意です。